Black World
□至上の愛
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びっくりするほど綺麗で、穏やかで
静かだった。
あっという間の出来事過ぎて…。
理解出来ない。
寄せられた、唇がそっと離れて、回した腕がすり抜けて。
痛みも苦痛もなく。
穏やかで。
信じられなくて。
今にも起き出しそうで…。
嘘だと思った。
オレは始め眠ったのかと思ってたけど、あれだけ紅く染まってた、頬っぺたが真っ青になっていて。
呼吸が止まっていて。
何でかなと思って…。
もう、あの漆黒の瞳は開かなくて。
「大佐?大佐?
どうしたの?…
大佐ぁ…大佐!!!!!
目を開けてよ!!
ヤダーっ!!大佐ぁ──
!!!」」
何度も肩を揺すってみても。
オレの叫び声で医師達が来て、オレは連れ出されて
医者は、何もせずに出て行っしまって。
理解するのには時間
を要した。
部屋に戻ると手が組まれていて。
何の事かわかんなくて…。
目がぐるぐる回って 立ってられなくて、意識を飛ばしたら、気がつくと病室でアルが見ていた。
「大佐は?」
アルは黙って首を振ってた。
湯潅されて、ワイシャツとスラックス姿でアイツは横たえてあって、眠ってる様にしか見えなかった。
一度アパートに戻り、アイツの亡きがらが横たえ、オレは傍に寄った。
そして見慣れた姿の仲間達にオレは混乱した。
そう中尉達も来たのだ。
そしてこの惨劇の中。
オレは真っ直ぐ中尉達の顔が見れなくて。
ただ謝り続けた。
目立ち過ぎるアメストリス軍の制服。
その制服を着替えてもらい。急遽用意して貰った、黒い服を着てもらう。
オレはロイの亡きがらの前で、見ている事しか出来なくて。
それでも時間は流れてて、真っさらなスーツを買って少尉達が帰ってきた。
このインフレの激しい中何処で誂えてきたのだろうと思いながらもオレには、どうでもよくなった。
「大将、まず顔洗ってこい。新しい服に着替えさせてやろう。」
オレは言われた通りに顔を洗い手を清め、傍に寄る。
ほとんどは少尉や中尉達が手伝ってくれて、オレはボタン一つかけるのも手が奮えて…。
真っ白なワイシャツは昔から彼のトレードマークみたいなもんで、その時の事を思い出しては、ボタボタと涙が落ちる。
その袖口には綺麗な石のカフスが取り着けられ、組み直した手には手袋を嵌め十字架が握らされていた。
「大将ネクタイ締められるか?」