WonderfulWorld
□WonderfulWorld最終章
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祈りを彷彿させる、錬金術のポーズ。
両の手の平が合わさり、構築式が身体の中で展開される。
そして起動、発動、解放。
初めて使った力は大きく、温かな力だった。
大佐の、はたけたシャツの胸元から吸収された、エドワードの力が身体を巡りロイの五感を呼び戻す。
視覚
聴覚
嗅覚
触覚
味覚
スイッチが入る様に身体の隅々が温かくなり、右の目に光が戻る。まばゆい光の中に、見たのは、懐かしくも思える、愛しいエドワードの姿。
すっかり長く伸びた髪。少しこけた頬、変わらない真っ直ぐな瞳。
手の平から発動する力の中に感じるのは、エドワードが大佐に想い続けていた、愛と言う優しさの力なんだろう。
「大佐ぁ…っ」
涙声の中に秘められた、言霊。何度名前を呼ばれたのだろう。
「ロイ!お帰りなさい、お帰りなさい…。」
大粒の涙があふれた。
回された腕から感じる、彼のマシンオイルと、髪から漂う甘いジャスミン残り香。
合わせられた肌の温もり。
こぼれた涙が頬を伝い、柔らかな唇が合わさり甘い唾液が伝う。
脳天に光が貫く。
「エド…。」
「ロイ!!」
二人の五感の全て交差して互いを感じた。
「大佐おかえり。」
眺めているだけでも、愛しくて、久々に眺めたエドワードの姿は少し俺の胸を痛めた。
その腕の中にすっぽりとはまってしまうくらいに細く、痩せたと言うもんじゃない、窶れた身体、その小さな身体を包みこみしっかり頭も支えるかの様に包む。
時々睫毛を震わせながら、すやすやと寝息をたてる。腕を介して伝わる鋼の胸の動き。
全て愛しかった。
時々、すっかり痩せ細った手が、ロイの医療用のガウンを掴む。
縋る様な手を握り返して胸元に寄せ温めた。
「すまない、鋼の心配かけ過ぎたな。
こんな俺の為に…。」
長い金色の髪に指を通し、柔らかな髪を梳いた。
緊張が解け、くすぐったいのか頭を動かし、嫌々をする。
それが可愛くて。
何度も悪戯をする。
それでも起きてこない辺り、彼の衰弱ぶりを教えられた。