スプラッシュ!!-sprush-
□電世一_始まりはいつも
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「……まさか本当にゲームの世界に入れるとは…………」
……ああ、仮にこれがなんでもないただのドッキリだったなら、今頃はお茶の間が笑いの渦に包まれているだろう。あいつはバカか、と。現実を見ろよ、と。
その通り。俺がもしも普通の人間だったなら、ゲームの世界に入るなんてそんなものは在り得ていいものじゃない。そんなの妄言だ。と、言い切れる。
しかし、残念な事に俺は普通じゃない。
今これはゲームの世界に入っている、と考えるだけで、この状況に矛盾は一つもなくなる。
たとえどれほどまでイタくたって。
たった一つ、人間はゲームに入れない、という概念をぶち飛ばしてしまえば全て成立するんだ。
――それが『普通』じゃない俺の考え方だった。
しかし――――本当にこれがドッキリだったら気が楽なんだがな。
仮にこのゲームが普通のネトゲと一緒なら、要領が分かる。
しかし、キーボードがなければ……操作のしようが無い。よって、ログアウトの方法も分からないし、そもそもゲームシステムすら分からん。
ま、キャラを動かすことならできるけどな。変哲なく、普通に歩けばいいだけだ。
しばらくの間、芝生を踏みしめながらあまりのリアルさに感銘を受けていると。
「…………ん? 何かこのアバター…………変だな」
自分の体が、いつもとは何か違うことに気がついた。
パッと見、人間でないのは確かだ。
……いきなりすごい事実が発覚したな。
ならば……動物、または架空の生物の類なんだろうか?
先ず、白い。肌色なんて見える範囲じゃ欠片も目に入らない。……あ、いや、美肌って意味じゃねえ。正真正銘の真っ白なんだ。明度最大の。
そして、長く先の太い両腕。同様なフォルムで地面に伸びる足。
胴体には首元から一本の黄色いラインが入り、それは逆三角にちょん切れた腰下あたりまで続いている。
…………ちょん切れた?