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□始まりはそう、あの時
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始まりは、そう



あの時だったんだーー










暴君は見ていた。
その視線の先には一人の少年、フリオニールがいる。
あの時、フリオニールだと思い捕らえようと罠を仕掛けた。
だがそこに捕まったのはフリオニールに限りくらい近いもう1人のフリオニールだった。







『…っ、誰だ!くそっ…離せ!』





全く同じ顔、同じ声、同じ姿なのに何か違和感を感じる。

気のせいだろうか。
いや、違う。




魔法で拘束していた両腕と両足の魔法を解き自由にする。
急に解かれたためか相手が驚いた表情をこちらに向けていた。



『…………』
「なんだ、せっかく自由になったのだ。今のうちに逃げればいいだろう」

『あ、いや…そうなんですけど…』

フリオニールの皇帝に対する扱いが何時もと違う。
フリオニールの瞳がじっと皇帝を見つめていた。




『あの…名前、教えてもらってもいいですか…?』
「!」


さしもの皇帝もこれには驚く。
だかすぐに何時もの表情に戻ると、フリオニールの耳元で囁いた。


「私の名は……」








マティウス





相手からそっと離れていく。
途中、フリオニールがマティウス、と繰り返し呟いたのが聞こえた。


『えと、マティウス、様…』
「…………」
『俺そろそろ行かなくてはいけないんで。それじゃ』








またいつか会える日まで



その日は決して遠くはないけど

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