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◆突発文:骸凪で白雪姫パロもどき 

「甘い林檎は、いかがですか?」


ある日、留守番をしていた時に黒いフードを身に纏った人が訪ねてきた。

綺麗な黒い髪で右目は隠れて見えなかった。けれど、隠れていない左目は、それは美しい藍色をしていた。
声からして、男の人だろう。でも、その整った顔は女性にも男性にも見える。

「甘い林檎は、いかがですか?」

美しい笑みを浮かべた男の人は、そう言ってカゴから1つ、真っ赤な林檎を取り出した。

吸い込まれそうな、藍色の瞳。
逆らうことのできない、強い力を秘めた瞳。

「……いただきます」

彼の手からその真っ赤な林檎を受け取って、一口、ほおばった。


ガクンッ


視界が反転し、意識が遠ざかった。

最後に見たのは、男の笑みだけだった。





どれ程眠っているのでしょう?瞼は重くて開かない。
いくつもいくつも、夢を見て、どんな夢だったのか、忘れるほど沢山の夢を見た。

ふわり

唇に柔らかい感覚。
すると、あれほど重かった瞼はパチリと開いた。

目の前にいたのは、長く美しい黒髪を後ろで束ねた、綺麗な男の人。
驚く程美しい男の人だけど、その顔立ちより紅と藍色の色違いの瞳の方に惹かれた。

「あぁ、やっと目を醒ましましたね?」

初めまして、六道骸と言います。
彼はそう名乗り、にこりと笑った。

『初めまして』?私はこの人と会ったことがある気がする。
私は何故眠り続けていたんだっけ?

覚えてるのは、黒と、藍色、美しい赤、そして―――
「…貴方は」

何か言おうと開いた唇に、彼は己の人差し指をそっとあて微笑んだ。

「僕は貴方を迎えに来た。それで十分でしょう?」

彼はそう言うと私を抱き抱え、馬車へと運んだ。


迎えに来たのは王子様ではなく、魔法使いでした

魔法をかけたのも、魔法を解いたのも魔法使い。
林檎を食べさせたのも、林檎の呪いを解いたのも貴方なのでしょう?

私はそれを怒ることも、嘆くこともしなかった。
それ以上に、彼の声を、瞳を、彼自身を愛してしまったのですから。

2010/09/23(Thu) 16:29

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