ごっつあ煮2

□Zeeteoo*(アポゾン)
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かつ、と硬い床にヒールの音が響く。照明もほんの少ししかないしんと静まり返ったメンテナンス室には今入ってきた長身の男以外存在しない。
男、アポリアはそれを承知でここへ来たのだ。


様々な機械で埋め尽くされた中を歩み進むと、奥に一際大きな装置がある。シェルターのようなその装置の中には今しがたメンテナンスを終えた巨大な機械がぽつりと佇むように鎮座していた。




「……ゾーン、」




そっと機械に触れる。
巨大なアンモナイトのような形をしたそれはアポリアを造り上げた創造主であり、彼の友でもあるゾーンが日頃使用している生命維持装置である。
今日は定期的なメンテナンスを行うために中にゾーンはいない。代わりの簡易装置を付けたゾーンは今頃アンチノミーに手伝ってもらいながら入浴していることだろう。


ゾーンはアポリア達とは違い生身の部分も存在するため、衛生面やゾーンの体調のことも考えて清潔にしなければならない。


出来ることなら自分が入浴を手伝ってやりたいのだが、大きすぎるこの体では恐らく不可能だろう。器用なアンチノミーが適任だ。アポリアはそう思っている。
それに、入浴には立ち会えずとも入浴後のゾーンを生命維持装置まで運ぶ役割はアポリアが担っている。仄かに石鹸の良い匂いがするゾーンを抱き上げ触れることが出来るので、それはそれでアポリアには至福の時間だった。




「………」




しかしここへ訪れたアポリアの目的は、その至福の時さえ霞んでしまう程の行為をするため。それを想像するだけで身体中が火照ったように熱くなる。
ゾーンの生命維持装置のメンテナンス日。それがアポリアにとって待ち焦がれた特別な日であることを誰が予想できようか。



「はぁっ……ゾーン……」



ぎゅ、と冷たい機械を抱き締める。
2メートルは優に越える巨躯をもつアポリアでさえその機械に腕を回すのは難しい。自ずと抱き付くような体勢になるがアポリアにはそれだけで十分だった。

ゾーンの、愛する友の一部に触れている。人目も気にすることなく目一杯ゾーンに触れられる。友という感情以上のものをゾーンに抱いているアポリアはその行為だけで息を荒げてしまう。
最初は何の気なしに触れただけだった。しかしいつからか自身の胸の内にある感情に気付いた時、甘い胸のうずきと共に現れたのは浅ましい劣情だった。


尊敬し、敬愛する友に性的な欲求を抱いてしまう。


以前はそんな感情を抱いてしまった自分を責め、恥じたこともあった。しかしそんな感情も月日が経てば薄れてゆき、いつしか発散しなければ暴発しかねない程にまで危うくなっていた。

そんな時にゾーンの生命維持装置のメンテナンス日があった。
その時から入浴後のゾーンを抱き運ぶ役割を担っていたアポリアは、生身のゾーンに触れるこの行為を言うならば生き地獄のように感じていた。抑圧した欲がいつ暴走してしまうのか、恐怖で思考がショートしてしまいそうになることもある。

あぁ今日も何事も無く終えることができるだろうか。
アポリアは入浴に向かったゾーンを待ちながら一人悶々としていると、ふとメンテナンスを終えたゾーンの生命維持装置が目に入ったのだ。








「あ、ぁっ…う、く…あぁっ…!」


それからアポリアがどうしたのか、それは今しがた行われている痴態を見れば明らかだろう。


メンテナンスを終えた無機質な機体に抱き付きながら、アポリアは自らの膨らんだ股間を押し付けていた。
ふうふうと息を荒げながらぐりぐりと腰を使って捏ねるように押し付けると、直ぐに芯を持ち始めた性器が白い布地を押し上げて脈打ち始める。




アポリアがゾーンに対して性的な欲求を覚えてからというもの、普段使われることの無かったアポリアの性器はまるで命を吹き込まれたかのように反応を示しだした。飲食及び排泄さえ滅多なことでは行わないアポリアにとって、それはある種の非常事態だった。
ゾーンを想い、触れれば恐い程の快感がその身を蝕むのだ。


それをゾーンが普段使用している装置に擦り付けた時の快楽と言ったら形容し難いものだった。案の定、アポリアはその禁忌を犯し自らの欲求を慰めている。




「う、ぁ……は、あっ…!」



腰をくねらせて勃起した性器を擦り付けるその様は、アポリア自身の巨躯も相まってまるで発情した獅子のようだ。たまにズンズンと打ち付けるようにして腰を押し付けるので完全に雄のソレに酷似している。


アポリアの猛烈な打ち付けにガタガタとゾーンの装置が揺れ始めるが、アポリアは意に介していないようだった。



「んうっ、はっ……ぁ、んっ…」


鬣のような髪を振り乱し、アポリアは眼前に映るつるりとした機体に口付けた。
ちゅ、ちゅっと最初は啄むようなバードキスを繰り返し、次にれろりと濡れた舌を機体に這わせる。ぴちゃりと濡れた粘っこい音が響き舐め回した機体が頬に擦れ自身も唾液まみれになる。

それさえも理性を失い狂ったように友の名を呼び続けるアポリアには、ひとつの興奮材料に過ぎなかった。



「っく…!ゾーンっ…あ、っうぅ…!ゾーン…!!」



罪悪感はある。
敬愛する友の、しかも命を繋ぐ大切な機械に対して自慰を行うなど。
もし、もしゾーンや他の仲間に知られたとしたら、アポリアは己を恥じ迷わず自ら姿を消すだろう。もしかすると自害するかもしれない。それ程にまで許されざることをしている自覚はある。



「う、ぅ…ん、ふっ…!」




しかしそう思う反面、疑問もある。


何故、マシーンであるこの体は必要性を持たない性的欲求を見出だし、淫らに反応しているのか。

アポリアの今の体はゾーンが造り上げたものだ。人間の身体に限り無く近い形で製作されたと言われればそれまでだが、このような生殖機能のようなモノは本当に必要だったのか。
ゾーンは、何を思い私を造ったのか。






「っく、ぁ…ゾーンっ……君が、君がっ…!」




私に、何を求めているのか。





アポリアの性器は極限にまで張りつめ自身さえも何か分からない液体を分泌している。その白いボディースーツのような布地にくっきりと形が浮き上がる巨根は、精の解放を待ちわびているのか打ち付けられる機体に糸を引かせながらぐちゅぐちゅと音をたてて震えていた。


長い間抑圧されてきた欲求は、早々に解放を迎えようとしている。



はっ、はっと獣のように短い息を吐きながらアポリアは腰を打ち付ける間隔を段々と短くしていく。



ダン!ダン!
ぐちゅっ、ぐちゅっ、



薄暗くしんと静まり返った室内には異様な衝撃音と水音、そして獅子の吐息しか聞こえない。

白銀と深紅が混じり合った美しい髪を唾液と汗で汚しながら、アポリアはうっとりとした瞳で無機質な機体を見詰めた。



「ゾーン…好きだっ…!君を…私は、君をっ……!!」





アアッ…!と一際か細い声を上げ、アポリアは限界まで腰を機体に押し付け、その精を解放した。




「あ…、はぁ、はぁっ…」




ドクドクと精液のような液体が放出され、股間をぐしゃぐしゃに濡らしていく。
息を吐きながら押し付けていた股間を離すと、にちゃ、と音をたてて機体と性器とを濁った白濁液が繋いだ。その量はとてつもなく多く、今でもアポリアの性器を伝い太股付近にまで流れ落ちている程だ。





なんと、虚しいことだろうか。


アポリアは快感で蕩けた顔を僅かながら歪めた。
大きく、鋭利な爪をもつその手で顔を覆う。







「…すまない。すまないっ…!」








また私は、友を汚してしまった。







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