フォーリンガール
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バンっ!!!
「ルッスーリアさーん!!」
「あらあらぁ、どうしたのかしらぁ?」
勢いよく扉を開ければ、中からあの派手髪あっち系のあの人が出て来た。
ふむふむ、あなたがルッスーリアさんですね。
くねくねしながらこちらへやってくる様は何とも異様だけど、憎めない感じがしたから何も言わない。
それに、機嫌損ねたらご飯つくってもらえないかもしれないしねっ。
「あの、私朝食を食べ損ねまして」
「色々と大変だったものねぇ、わかったわっ!!私がお料理作ってあげるから、ちょっと待っててちょーだいっ!!」
「わかりましたっ!!」
びしっ、と敬礼して、ルッスーリアさんを厨房へと見送る。
あぁでも何だか、ここへ来て初めてよき理解者に巡り合えた気がする。
すいません、私はあなたのこと理解できないと思うけど・・・。
でもやっぱり彼、・・・いや、彼女か?
とにかくルッスさんは好印象だ。
「今日のごっはんはなんだろなっ」
「何してんの?」
「っとわぁっ!!?」
よく小学校のときにやってた、椅子をゆらゆらさせるやつをしてたら、突然後から声が聞こえた。
思わず椅子ごと地面に激突した。
あいたた・・・
と、打った場所を抑えつつ見上げれば、そこにはあのナリプリ金さんの姿が。
「こらこらー、王子だか何だかしらないけどやっていいことと悪いことがあるんだぞー」
「つーか王子何もしてねぇし、お前が1人でずっこけたんだろ」
「そのように見えたのならそういう可能性もあるかもしれませんね」
「いや、そういう可能性しかねぇから」
ししっ、と独特な笑い方をする金さん。
ちゃんと目見えてるのかなぁ。
何て思いつつ、再び椅子を立てなおして座る。
と、金さんも横に座ってきた。
「てゆーか、エレベーターから来たってほんとかよ?」
「え、まさかのテレパシー?」
「ちげぇから、スクアーロに聞いたんだよ」
「・・・・・だれ?」
誰だよすくあーろ。
何て思ってたら金さんは苦笑いだし。
何だ私の扱いひどくないかここ。
そりゃまぁ新入りだけどさ、一般人だけどさ。
「ま、いーや、・・・で、何でエレベーターなわけ?」
「そんなのエレベーターに聞いてください」
「喋るとでも思ってんのかよ」
「思ってないです」
「・・・・まぁ、自分の意志ってわけじゃないんだ?」
「当たり前ですよ、自分から望んで暗殺集団の根城に足を踏み入れるなんて、どこのドMなんだってゆう」
私はマゾじゃない。
と言い張ったら、金さんはやっぱり「ししっ」と笑った。
何か面白いこと言ったかな私。
「でさ、カエルのお守すんだろ?」
「お守じゃないです教育です」
「どっちでもいーし、とにかくさぁ、お前にできんの、そんなこと」
この人を小馬鹿にしたような物言い。
かなりイラッときた。
何だ何だ王子だか何だかしらないけど所詮ナリプリだろっ!!
私にあのカエルの教育ができるのかだって?
そんなこと、
「無理に決まってるじゃないですかっ!!」
「はっ・・・?」
「だって私ただの女子高生ですよ?教員免許なんて持ってません、教育の方法なんてこれっぽっちも分かりません、よって結論っ!!」
「・・・・・」
「私にあのカエルはどうすることもできませんっ!!!」
そりゃ直るもんなら直したいよあの性格。
だけど性格なんてそうそう変わるもんでもないでしょ?
だったら私には無理っ!!
そもそも教育係立候補したのだって言ってしまえば命乞いのようなもんんだし・・・
・・・って何だこのピリピリする感じ。
隣からものすごい威圧感を感じるんだけど。
と、恐る恐る金さんの方を見てみれば、その手にキラン、と光るものが見えた。
「だったら、お前いる意味なくね?」
「じょじょじょ冗談に決まってるじゃないですかぁっ!!カエルの教育ですよねっ!!私にお任せあれっ!!!」
だから早くそのナイフしまって!!
と心の中で必死に訴えれば、願いが通じたのか金さんはナイフをしまってくれた。
・・・ふぅ、危機一髪。
「ま、別に期待はしてねーけどさ」
「賢明な判断かと」
「せいぜい頑張れよ」
ぽん、と私の背中を叩いた金さん。
内容はどうであれ、応援されてしまった。
・・・・ちょっと感動。
そのまま立ち上がり部屋を出ていく金さんを見送れば、良い匂いが漂ってきた。
あ・・・これって、もしかして。
と思うと、少しだけ寂しくなる。
金さんの不意打ちの気遣いに心動いたこともあってか、思わずまた涙腺が緩みそうになった。
・・・・だめだだめだ、弱気になるんじゃない。
ここにいる人達、何だかんだで普通の人間だし、大丈夫。
ちょっと国籍違うだけで、ちょっと日本からは離れてるだけで、同じ生き物同じ地球上の世界だし。
「お待たせぇーっ!!」
「わーっ日本食ですかーっ!!」
ルッスーリアさんが持ってきた食事は、予想通り日本食だった。
この匂いが懐かしい。
そういえば、今朝も同じ匂いが台所に漂っていたな。
「お口にあえばいいんだけどぉ・・・」
「大丈夫ですっ!!見た目も香りも素晴らしいですからっ!!」
「ほんと?そう言ってもらえると嬉しいわぁ」
「それじゃ、いただきまーす!!」
ぱん、と手を合わせて元気よく言った。
ルッスーリアさんの嬉しそうな顔に何だか心が和む。
まるで本物のお母さんみたいだ。
(体は男の人だけど。)
それがまた私の涙腺を緩めようとしたけど、無理矢理笑顔を浮かべた。
大丈夫。
きっと、すぐ、戻れるよ。