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□水色01
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「・・・おい」

「はい・・・、・・・・え?」




振り向いたその顔は、あの日のあいつと一緒だった。

いや、1つだけ違うのは、泣いてないこと。


それでも俺を見て驚いた顔はあの日と同じだ。



「あんた・・・この間の・・・」

「・・・・・」




・・・・しまった。

勢いで声をかけたはいいが、

何を話せば・・・?


気まずさ全開のまま俺はそいつの肩から手を離した。

何も言わない俺に、あっちも困惑しているようだ。


その時、タイミングよく悟浄がやってきた。



「三蔵、お前めんどくさいとか言ってたクセに俺より先に手ェ出してんじゃん」

「・・・うるせぇ」

「ま、いいけどさっ」



そう言いながら悟浄は、俺が目をつけたと思っているそいつを覗き込む。



「へぇ・・・三蔵にしては珍しい」

「何がだ・・・」

「いんや、べっつにぃ?」



俺もさーがそ、なんて言いながら悟浄の視線は違う場所へ向かれた。

まぁ、こいつにとって女なんて何でもいいんだろうがな。

いや、俺もそうだった。


そうだったが、・・・こいつは違う、気がする。


1人で葛藤を続けていると、そいつの顔が不機嫌そうなものに変わった。



「てゆーか何?用ないならさっさと帰りたいんだけど」

「いや・・・用は、・・・ある」

「・・・何その間は」

「・・・何でもいいだろうが」

「よくないし、あの赤髪の人もそうだけどさ、あんたら女遊びしてるだけでしょ?」



的確に的を指され返答に困った。

そうだ、今まではそうだったのだ。

だが、今日こうやって女に声をかけたのはそのためではない。

じゃあ何のためか、と聞かれれば返答に困るが、少なくとも目の前にいるこいつで遊ぶ気は毛頭無かった。



「・・・違う」

「嘘言うなってーの」

「嘘じゃねぇ」

「・・・じゃあ、何?」

「・・・・知らん」

「は?」

「だから、何でお前に声かけたのか、俺にも分かんねぇんだよ」




正直に言えば、そいつは何コイツとでも言いたげな顔で俺を見上げた。


大体、あの日はあんなだったのに、本当はこんな奴だったなんてな。

どれだけ女らしいかと思えば、色気も何もゼロじゃねぇか。

今更だが、あの日からの数日間、こんな奴のために俺の頭を使わせられていたことが腹立たしくなってきた。



「・・・・もういい」

「あっ、ちょっと待って」



・・・何なんだ、一体。

さっきまで俺のこと変なモンでも見るような扱いだったくせに。

いざその場を離れようとすれば、呼び止めたのはあいつだ。



「・・・あのさ、お礼、させて?」

「・・・は?」

「べ、別に・・・深い意味とかはないんだけど・・・ほら、この間の・・・」

「俺は何もしてない」

「したよ、・・・うん、私にとっては、だけど」



急にさっきまでの勢いがなくなったそいつに俺は眉を寄せた。

声色もどことなく寂しげな感じに聞こえる。



まだそいつのことを何も知らないはずなのに、何となく、もう少し一緒にいたいと思っている俺を嘲笑った。

こんなにまで1人の人間に執着するなんて。


俺はただ、その理由が欲しかった。





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