フォーリンガール

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「・・・・いない・・・・」



朝。

目覚めと同時に夜中の出来事を思い出して勢いよく飛び起きた。

そのせいか、いつもより寝覚めがいい。

けど、どこを見渡しても部屋にフランの姿は見当たらなかった。




「・・・・・・夢、・・・かな・・・・・?」




どれが現実で、どれが夢なのかわからず、寝起きということも手伝って少し混乱。

まぁ、昨日昼間に帰したわけだし、夜中の出来事が本当に起こってたっていう事実の方がおかしいわけだけど。


まぁ、いないならいないで・・・・・





「・・・・ゆめ・・・・・、」




ぽつり、とまた繰り返した。

夢だったのか・・・・・そっか・・・・。




「・・・って、何残念がってんだ私」




がしがし、と寝ぐせのついた髪をかき分けて私はベッドから降りた。

ふわ、と1つ欠伸がでる。


今日は月曜日だ。

学校に行く準備しなきゃ。

あ、そういえばもうすぐテストだっけ。

やだなぁ・・・。


そんなことを考えながらリビングへ向かう。

扉の向こうからいつも通り、テレビの音声が聞こえていた。




ガチャ、




「おは、・・・・よ・・・・・」

「あら、香奈、おはよう」

「今日は早いな」

「おはようございますー」





・・・・・・・・・・・・・・・ナニコレ。笑


開いた扉を思わず閉めそうになった。

目の前の光景があまりにも衝撃的すぎて。


リビングのテーブルに並ぶ朝食。

台所に立つ母親。

既にスーツ姿で朝食をとる父親。

そしてその目の前の席で何故か私の父親と朝食を共にする・・・・

・・・・あれは・・・紛れもなく・・・・・





「カエルぅぅううっ!!!?アンタ一体ここで何やってっ・・・・!!?」

「いやー日本の朝食っておいしいですねー」

「あら、ありがとう」

「ほら、遠慮せずにもっと食っていいぞ」

「ありがとうございますー」

「ってなんでそんなナチュラルに会話成立してんのっ!!?」





と、お父さんが差しだした皿の上の焼き魚を、何ともまぁ器用な箸使いで取るカエルくん。

私の日常の風景に溶け込んでいることにも、両親と何の違和感もなく会話をしていることにも驚くしかなかった。





「ほら香奈、そんなとこに突っ立ってないであなたも早く食べなさいよ」

「・・・・・いや、・・・でも・・・」




言いながら、お母さんもお父さんの隣の椅子に座った。

いやいや、何でこんな普通なんだ・・・。

もっと突っ込むところが・・・。

てゆーかそもそもカエルが夜中に現れたのは夢じゃなかったんだ・・・。


ものすごーく気まずさを感じながらテーブルへ向かう。

そして、渋々フランの隣の椅子に腰かけた。




「・・・・・・・・・・ねぇ、」

「何?」

「・・・・これ、いいの?」




これ、とフランの方を指さす。

と、お母さんが「友達のことを"これ"なんて言わないの!」と言った。

いや、そもそも友達でもないってゆう・・・。




「香奈、聞いてないの?」

「な、何を?」

「すいませんー、香奈さんには言ってないんですー」

「なんだ、そうだったのか」




え、いや、何、言ってないって。

何の話かさっぱり。

完全に私だけ置いてかれてる。


と、顔を引きつらせていたら、ふとフランが箸を置いた。




「実は、ミー・・・」

「う、うん・・・?」

「家出してきたんです・・・」

「・・・・は?」

「すぐ物を投げる父親にすぐ大声で怒鳴る母親、それに意地の悪い兄弟にオカマっぽい家政婦、そして極めつけは何故か家に住み着いたタコ・・・・」

「は、・・・え、何言って・・・」

「そんな家に嫌気がさして、思わず飛び出してきちゃったんですー・・・」




語尾に哀愁漂わせながら言ったって何の同情も感じなかった。

だってそんなわけないって分かってるし。

てゆーかその家族構成にものすっごい思い当たる節があるんですが。


とか何とか思いながら顔を引きつらせているとフランが少しだけ顔をこちらへ向けた。




「そんなとき、香奈さんが家に来ていいよと言ってくれたので・・・」

「えっ!?いやいやちょっと、どさくさにまぎれて何言ってんの!?」

「ミー、あの家にはもう帰りたくありませんー・・・」



わざとらしく眉尻を下げたフランを見て思わずチョップが出そうになった。

が、そうしなかったのは先にお母さんが口を開いたからだ。




「大変でしょう、気が済むまでここにいていいからね」

「ありがとうございますー」

「困ったことがあったら何でも言うんだぞ」

「はいー」




・・・・どうしてこうなった。


と、私はフランの捏造秘話と両親の信用っぷりに呆れかえるしかなかった。

これは何を言っても無駄そうだ。

というか下手したら何の罪もない私が悪者扱いされる。



・・・けど、まぁ。

フランだって向こうの世界のことがあるだろうし、そう長くここにはいないだろう。

そう思って、自分を納得させることにした。




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