フォーリンガール

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「ありえないありえないありえないありえ」

「落ち着いてくださいー」

「・・・・・とりあえずもう一発殴らせて」

「えーいやですよー」



そこにいるであろうそいつを出来るだけ視界に入れないようにして、私は頭を抱えた。

そいつは大人しく床に正座しているみたいだけど。


・・・だって、・・・この間あの場所から戻ってきたばっかなのに。

エレベーターだって直って、もうあの世界からは遮断された・・・はず、なのに・・・。



なんで、カエルが私の家にいるわけ。



「いやー、一軒一軒怪しまれないように探すの大変だったんですよー」

「い、いっけんいっけん・・・?」

「はいー、宅配便のオニーサンなら自然だと思いまして―、まぁ案外すぐ見つかりましたけどー」




どうやら私の家を探すために、変装してこのマンション中を探していたらしい。

・・・そ、そこまでするか・・・



「っとにかく!!早く帰って!!」

「えー折角来たのにー」

「勝手に来たんでしょうが!!しかも普通に幻覚解けばいいものをっ、あんなわけのわかんないことしてっ・・・!!」

「だってー、香奈さん見たらちょっとイタズラしたくなっちゃってー」




ぶー、と口を尖らせるカエル。

何そのぶりっ子イライラするだけなんだけど!!


とにかく今は、どうしてカエルがここに来たのかとか、どうやって来たのかとか、そんなのはどうでもよかった。




「帰れっ!!」

「それは無理なお願いですねー」

「何でよっ」

「ミーの努力が水のあ・・・げろっ!!」



すこーん!!

毎度の如く片手を振りおろせば綺麗な音がして、カエルは前のめりになった。

てゆーか理由になってないし!

カエルの努力とか知らないし!




「てゆーか何、まさか泊まるつもり?」

「それもいいですねー」

「よくないっ!!今は私しかいないけど、住んでるの私だけじゃないんだから!」

「ご両親ですかー?」

「わかってんなら話は早い!」

「ご心配なくー、香奈さんの部屋からは一歩も出ないんでー」

「ちょっと待てぇっ!!!



よいしょ、と言って立ちあがろうとしたカエルの頭を鷲掴みにして無理矢理腰を降ろさせた。

こいつ、本気で言ってんの・・・?




「バレるに決まってるでしょ!!」

「じゃあ、バレなきゃいいんですよねー?」

「はっ?」




当たり前のようにそう言ってくるカエルを見降ろして顔を引きつらせた。

バレなきゃいいとか、そういう問題じゃない。

こいつがここにいること自体が大問題だっていうのに。


と、ふいに未だカエルの頭に置いたままだった手をとられた。




「まぁ本当は、別に居座るつもりじゃないですしー」

「え、」

「ちゃんと帰りますからー」




帰る、と言われて少しだけどきっとした。

・・・って、何でちょっと寂しいとか思ってんだ私。



「暇なときは遊びにきますんでー」

「・・・・・・は?」

「あー・・・えっとですねー、

「・・・うん?」

「エレベーター、」

「え、えれべーたー・・・?」

「自由に行き来できるようにしてもらったんですー」

「・・・・・・はい?」



カエルの言ってる意味がよくわからなかった。

エレベーターが自由に行き来できるって、そりゃまぁボタン1つ押せば当たり前のことで・・・・。


いや、そうじゃなくって、

カエルがここにきたのって、もしかして、




「ヴァリアーのアジトと、繋がってる・・・ってこと・・・・?」

「はいー」



何してくれてるんだこいつっ・・・!!!

と、驚愕した。

だって、あんなアホ集団だけども、仮にも暗殺部隊なわけであって・・・。

そんなところと、この平和なマンションが繋がってるって・・・!?




「まずいってそれっ!!」

「大丈夫ですよー、わかりづらいところにボタン設置してますしー」

「そういう問題じゃっ・・・」




まさか、こんな事態になるとは予想もしなかった。

あれで終わりと思っていたのに。

終わるどころか、もっと深くなって。

遮断されたと思っていた2つの世界は、むしろ以前よりも強く関わり合うことになってしまったのだ。


幸いそれを知るのは、この世界で私だけだとは思うけど。





「というわけでー、今日は探索と報告のみで失礼しますー」

「ちょっ、フランっ!!」

「また暇なときにでも遊びにきますんでー」

「いやいや困るしっ!!」

「香奈さんも、遊びにきてくださいねー」




遊びに行くような場所じゃないだろ!!

とツッコミを入れつつ、玄関に向かうフランを追った。

・・・・帰る、のか・・・。




「じゃ、そういうことでー」

「ふ、フランっ!!」

「はいー?」

「・・・・・次、来る時は・・・、もうちょっと普通に来てよね」

「・・・・了解ですー」



無表情なはずのフランが、ふわり、と笑った気がした。


バタン、と閉まるドア。


この短時間でとんでもない事が起こって、私の脳内容量はパンクしそうだった。

だって、まさかフランがここに・・・。




(・・・・でも、何で、だろう)
(また会えたことが、)

(・・・こんなに嬉しいなんて)




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