鮫誕2011

□25.
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何時間待っても帰って来やしねぇ。

・・・沢田のやつ・・・。


いい加減待っていられなくなって、俺は沢田の部屋へ向かった。




バァン!




「う"ぉ"ぉいっ!!沢田ぁっ!!!」

「うわっ!びっくりした、いきなり入ってこないでよ」




はっ、わざとらしいったらねぇぜ。

とりあえず、俺の目的はあくまで澪だ。

こいつに用はねぇ。

・・・が、無駄に広い部屋を一通り見渡してみるが澪の姿が見つからない。




「う"ぉい、澪はどうしたぁ」

「え、澪?・・・あ、やっぱりバレたんだ、話したこと」

「んなこともうどうでもいいんだよぉ、早く澪を返せぇ」

「返せ、って・・・車もちゃんと手配したし・・・」

「数時間前に霧の女使って呼びだしただろうがぁ!!」

「霧・・・クロームのこと?別に俺、そんなことしてないけど・・・」




こいつ、いつまでとぼけてやがんだぁ・・・。

と、そろそろ掴みかかってやろうかと思ったところでふとある考えが過った。


・・・まさか、・・・・幻覚・・・・?




「・・・んなはずは・・・」

「何、どうしたの?」

「・・・・っ、んっとにてめぇは澪を呼び出してねぇんだなぁ!?」

「そう言ってるじゃん」




まさかここにきてやられるとは思ってもみなかった。

しかも、俺の目を掻い潜るとなるとよほどの術師か・・・。

何にしても急ぐにこしたことはねぇ。

俺は足早に踵を返した。




「ちょ、スクアーロっ、何かあったの?」

「るせぇ!!てめぇに構ってる暇はねぇんだよぉっ!!」




どうか。

・・・どうか、無事でいてくれぇ・・・。




──────




気付けば、暗かった景色の片隅に光が差していた。

もう朝かぁ・・・。


昨夜アジトを飛び出して数時間。

一行に手がかりらしいものすら見つからないまま夜が明けてしまった。




「・・・く、っそ・・・」



何故あのとき止めなかったのか。

そう思うたびに柄にもなく自分を責めて。


俺は、また守れねぇのか。


と、自分を卑下した。





(傲慢が聞いて呆れるぜぇ、)
(・・・結局、)
(1年前と一緒じゃねぇかぁ・・・)





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