鮫誕2011

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空気が重いったらありゃしない。

先ほど部屋に戻ってきてから、当たり前というか何というかずっと無言が続いていた。


そりゃまぁ、あんなことがあった後じゃいつも通りなんてお互いに無理なわけで。

それにしても、居心地が悪い・・・。

・・・どれ、ここは1つ勇気を出してみるか。





「・・・・スクさん、」

「・・・何だぁ」

「・・・もしもね、私が全部思いだしたらどうする?」





単純に気になったから聞いてみた。

スクさん達は、私の記憶が消えたことに乗じて私を解放したと言っていた。

ならば、もし記憶が戻った時、スクさん達は私をどうするのだろうか。

また、これまでの一般人としての生活を送らせるのか、それとも1年前以前の生活(どんなのかは知らないけど)に戻させてくれるのか。




「んな"もしも"の話なんてするんじゃねぇ」

「んーまぁ、そうかもしれないけど・・・」

「だが・・・・、一応澪がどうしたいかってのは聞くだろうなぁ」




天井を見上げながらスクさんが言った。

・・・私が、どうしたいか。

私の知らない私は、どっちを選ぶんだろう。




「・・・でもねー、」

「あ"ぁ?」

「私自身は覚えてないんだけど、体のどっかが覚えてるみたいなんだよね」

「・・・意味わかんねぇぞぉ」




根拠はないけど、思い出せそうな気がしてならなかった。

変な感覚。

知らないことのはずなのに、私は知っていて。

それが当たり前みたいで。


その時だ。


ウィィン、


と、突然扉が開いた。

私もスクさんも同じ様にそちらへ目を向ける。

すると、




「・・・あ、あの・・・」

「何の用だぁ」




そこにいたのはいつかの眼帯美人さんだった。

スクさんじゃないけど、何の用なのかな。

・・・てゆーかスクさんそんなに威嚇しなくてもいいじゃん、美人さん困ってるし。





「・・・ボスが、呼んでる・・・」

「あ"ぁ?」

「・・・そこの子、・・・」

「え、私?」




視線があって、ボス(おそらく沢田さんのことだろうけど)が呼んでいる人物が私だと分かった。

何だろう、あれ以上話すことなんて・・・・まだ何かあるのかな・・・。

と、少し不安になりつつも、私は立ちあがった。


・・・まぁ、スクさんと2人きりで空気重かったとこだし、ちょうどいっか。


無理矢理そうプラス思考に考える。




「・・・ってことで、いってきまーす」

「・・・お"ぅ、気をつけろよ」

「うん、・・・え、何に?」

「・・・・・・・・・沢田に?」

「何で疑問形」

「るせぇとっとと行けぇっ!!」




追い出すようにそう叫ばれて、私も眼帯美人さんも少しびっくりしながら部屋を後にした。

まっ、別に気をつけることなんて何もないだろうし。


スクさんの言葉なんてすぐに忘れて、私は美人さんのあとを着いていった。


それにしても、女の私から見てもほんとに美人だなぁこの人。

何で眼帯つけてるのかなぁ・・・

・・・・あれ、なんで周りに青い煙みたいなのが漂ってんの。





(1年前のこと以外に話すことなんて、)
(・・・・他に何かあったかぁ・・・?)





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