フォーリンガール

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「幻術、ってことは、ようするにまぼろし?」

「まぁそういうことになりますねー」

「・・・にしても、久々に外に出た気がするなー、思わず走り回りたくなっちゃう」

「あ、」




よーい、どん!

と心の中で掛け声を上げた瞬間。


ぐいっ、


と服の襟元を掴まれた。




「ぅえっ!!・・・な、何すんのっ!!首閉まるじゃん!!」

「・・・・・・・・・・チッ」

「何その舌打ちっ!!?」



走り出そうとして止められて、挙句の果てに舌打ちまでされて腹が立った。

まじむかつくこのカエル。

一瞬でもときめきかけた自分がバカだった。




「まぼろしって分かってて走り回ろうとするバカは香奈さんくらいですよー」

「これ以上は私だって黙ってないからね」

「お好きなようにー、でもここってー、景色はこれでも実際はアジトの廊下なんですからねー」

「・・・・・で?」

「走り回って壁にでも激突したら、ぶさいくな顔がもっと酷いことにな・・・げろっ!!」




毎度お決まりのチョップ!!

を喰らわしてカエルを黙らせた。

何なのさ毎回毎回ぶさいくって言いやがってっ・・・。

自分がちょっと美系だからってバカにしてんのかこのやろうっ!!




「ぅー・・・痛いですー・・・」

「ふんっ」

「ミーは香奈さんのためを思ってー・・・」

「一言余計な言葉がなかったら無償で感謝してたっての!!」

「・・・・・・・・・へぇ」




その時、なぜかカエルが二ヤリ、と笑った気がした。

・・・え、何その顔・・・。


と思った、次の瞬間、



ぐいっ、



と、今度は襟元じゃなく腕を強く引かれた。

何がどうなってるか分からないまま、私は重力に逆らうことなく引っ張られた方向へ倒れ込む。

辿りついた先は、カエルの腕の中だった。




「・・・・・・は・・・、」

「今度こそー、香奈さんのためですからねー」



見上げればすぐそこに無表情なカエルの顔があって。

初めて、ではないけどさすがにこの至近距離は耐えがたい。

離れろ、と頭では命令しているのに、体が動かなかった。

・・・・・くそぅ、不覚にもドキドキしちゃってる自分が悔しい・・・。


と、その時だ。

ひゅんっ、と私の後を風を切る音が通り過ぎていった。





「てんめーっ絶対殺す」

「べ、ベルっ、落ちつ・・・っこあぁっ!!?」

「でかい図体して一丁前に避けてんじゃねぇよこのタコ!」

「ぬぉぉぉっ!!タコとはなんだ貴様ぁっ!!!」





・・・・・・・・・・・。

・・・・え、何、これ。


と、背後から聞こえてきた聞き覚えのある2つの声に思わず眉を寄せた。

ゆっくり、と振り返ってみれば。


傘のおじさんと金さんが追いかけっこ、・・・・というか喧嘩をしている。

そして、幻術の解かれたアジト内の廊下を見てみれば至るところに金さんのナイフが突き刺さっていた。




「ねー、だから言ったでしょー?」

「・・・・・・・」

「ミーがいなかったらー、香奈さん今頃サボテンになってましたよー」




よかったですねー。

そう言うと、カエルと私の体はようやく離れた。


・・・・って、ちょっと待て。

なに、この思わせぶりな行動。

いや別に期待してたとかそういうわけじゃないけど、もっと他にやり方ってもんが・・・。





「・・・・香奈さーん?」

「・・・・くたばれぇぇぇっ!!!」

「げろっ!!」




無性に腹が立ったから、既に定番になりつつあるチョップを容赦なく喰らわしてやった。


・・・あ、カエル(被り物)へこんだ。

・・・ごめんねカエルの分身よ・・・。



(・・・・え、下ネタじゃないよ?違う違う)




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