フォーリンガール
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「ひとまず子供は黙っていなさい」
「・・・ミーが子供なら香奈さんだって子供ですよー」
「そ、そうだそうだー!!」
「・・・ほう、香奈さんというのですか」
ここに来て初めてカエルの意見に賛同してみた。
・・・だって何とかこの場から立ち去りたかったし。
なのに、さぁ・・・
「香奈さん、僕ともっとお話しませんか?」
「いえ遠慮します」
「そんなに冷たいことを言わないでくださいよ、ツンデレも捨てがたいですが僕としてはもっと甘えていただけた方が・・・」
なぜかなっぽーの求愛行動が余計にエスカレートした。
・・・これが何の変哲もない日常で起こっていることなら少しは喜べただろうに・・・。
最初っから変態オーラ全開で迫られちゃイケメンだって無駄な武器だし。
と、その時だった。
「こんな変態ロリコンなっぽーは無視するのが一番ですよー」
そう言いながら歩きだしたカエル。
しかも、私の手をとって。
・・・・ちょっ、えっ、シェイクハンズー!!
(※シェイクハンズ(握手)ではありません)
意外と温かいカエルの手に何故かドキドキしながら、私は珍しく反論もなしにその後をついていった。
・・・・というか引っ張られるから必然的にそうなるだけなんだけど。
恐る恐る、チラと後を振り返ってみれば。
「・・・・あ、れ・・・?」
さっきまでそこにいたはずのなっぽーの姿はどこにも見当たらなかった。
──────────
5分ほど歩いたところで、ようやくカエルの足が止まった。
・・・が、私に背中を向けたまま何も喋らないし動かない。
しかもまだ手は繋がれたまま。
「・・・・・かえるー?」
「・・・・・」
覗き込むようにして呼んでみたけど、やっぱり無反応。
えー、何だよー・・・。
「おーい、カエル―、聞こえてんのー?」
「・・・・・」
「・・・カエ・・・、フランくーん」
ぱっ、と思いついて、初めてカエルの名前を呼んでみた。
というか覚えてた自分にびっくり。
ほら、人の名前とか覚えるの苦手だし。
ましてや外国人名なんて尚更。
だけど効果があったのか、カエルはゆっくりとこちらを振り返った。
「・・・・・言っときますけどー」
「・・・うん?」
「マジックじゃなくて幻術ですー」
「・・・はい?」
何かと思えばいきなりそんなことを言われた。
マジックじゃなくて幻術・・・?
・・・・あぁ、もしかして、
「さっきの、花束のやつ?」
「そうですー」
そう言ってカエルは私の手からその手を離した。
かと思えば、その両手を宙にかかげて、
「例えばー、こーんな感じでー」
じゃーん。
と、カエルの間の抜けた声が聞こえた。
かと思った次の瞬間、
「・・・・・な・・・」
ヴァリアー邸の無機質な廊下にいたはずなのに。
カエルがふわっ、と手を振った瞬間、一瞬にして私たちの足元が一面真っ白な花で覆い尽くされた。
瞬きの間に起こった出来ごとに、何の言葉も見当たらずその光景に見惚れてしまう。
「・・・・す、ご・・・・」
「・・・驚いた顔もぶっさいくですねー」
「人が感動してるときに余計なこと言うな」
「げろっ!!」
カエルの余計なひと言に構わずチョップを喰らわしてやった。
あぁ折角の雰囲気がぶっ壊れたじゃん・・・。
いや、でも・・・
「・・・・きれい」
「でしょー、ミーの方が師匠よりセンスあると思うんですよねー」
「え、そんなとこ対抗すんの?」
「弟子はいつだって師匠を抜くつもりでいるもんですからー」
「・・・そうなのかな」
相変わらずわけのわからない言動だ。
だけど、何か意外な一面を見た気がする。
なっぽーに対する対抗意識、とはいえ。
私に、こんな景色を見せてくれるなんて。