フォーリンガール

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前回までのあらすじ。


天気は晴れ。

まったくの清々しい朝。

私、五十嵐香奈は今日もいつもと変わらない生活を送るはずだった。

それなのに、エレベーターがたどり着いたのは、地上ではなくイタリア。

しかも、暗殺者達の根城だっていうの!!

最初は怖かったけど、みんな優しくて、私もあっという間に溶け込めたわ。

だけど、やっぱり寂しさは拭えなくって。


そんな時、あの人は現れたの・・・!!

まさしく、白馬に乗った王子様!!

彼は私の手を取り、こう言ったわ・・・。




『ずっと、君のことを探していたんだ・・・』



そして、彼は私を暗殺者の根城から連れ出してくれたの。

さぁ、ここからが本番よ!!

王子様と私の魅惑のストーリー、

はじまるわよっ!!!







「・・・・・・・・・」

「さぁいつでもカモーン!!私はあなたのことを待ち続けているわぁぁぁっ!!!」

「・・・センパーイ、このやり場のない殺意はどうすればいいと思いますかー?」

「奇遇だなぁフラン、俺も今どうしようか悩んでるとこだぁ」



約2名分の冷めた視線を感じながら、私はひたすら現実逃避に没頭していた。

だってしょうがないじゃん。

こんなとこで普通にしてろ、なんて方が無理だから。

男ばっかだし、暗殺者だし、イタリアだし、カエルだし、外国人だし、顔整ってるし、劣等感激しいし・・・。


あぁぁぁぁもうっ!!

言いだしたらキリがないっ!!


ルッスさんが出してくれた紅茶をガブッと一気飲みした。

ら、




「あ"っつっ!!!?」




まぁ案の定熱くって。

零しはしなかったけど舌がヒリヒリする・・・。

あぁまた私のことを哀れな目で見る視線を感じる・・・。




「何やってんだぁ、お前」

「うるはいっ!!!」

「センパイ、多分このワカメが教育係だともっと苦労することになると思いますよー」

「・・・そんな気がしてきたぞぉ・・・」




あ、やっばい。


クビ=死ぬ、ってことだからね。

これはまずい。

先生らしいとこ見せなきゃ。


そう思って、私は鞄からあるものを取り出した。

学生の敵、数学の教科書だ。



「ノープロブレムッ!!私がちゃんと教育してあげるからっ!!!」

「そんな張り切んないでくださいよーうっとおしい」

「しょうがないなぁ・・・先生って呼んでくれないと、許さないんだからねっ!!!」

「・・・別にそういうの求めてないですー」



なんだか反応薄かったから、キャラを変えてみようと思ったのに。

「ツンデレ教師にウハウハ作戦」は一瞬にして失敗に終わった。

チッ。




「まぁ、茶番はここまでにしようか」

「勝手に盛り上がってただけでしょー」

「さぁそこのカエル!!この教科書全部解けたらいいものあげるよっ!!」




ばんっ!!と机に教科書を叩きつける。

やっぱりカエルは無表情。

これは勝ったな、と私は確信した。


何せ相手は暗殺者。

絶対こういう一般教養には疎いと思うんだ。

高校生の数学なんて、解けるわけないだろう。

てゆーか、掛け算もできないんじゃない、こいつカエルだし!!




「ほーら偉そうなこと言う前に解いてごらんよ」

「・・・・わかりましたー」



私は二、と勝ち誇った笑みを浮かべた。

そしたらカエルはめんどくさそうに教科書を手に取って。


カエル+教科書に大きな違和感。

隣では銀さんもその中身を覗き込むようにして見ていた。


パラパラ、とページをめくりながら「へー」とか「ふーん」とか言ってる2人。

・・・ふふっ、解けないんだろうそうだろう?

さぁ大人しく負けを認め・・・




「日本の学生ってレベル低いですねー」




・・・・・は?


と、これが自分の声なのかと思うほどの低い声で言ってしまった。

無表情なカエルがむかつく。

てゆーか負け惜しみか。




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