フォーリンガール

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教科書と筆記用具と。

お弁当と、お財布と。

携帯と、ミュージックプレーヤー。



を、鞄に詰め込んで。

まだ完全に覚醒してないまま、家を出る。




「行ってきまーす!!」

「行ってらっしゃーい」




扉を開けて目を覚ますように少し大きめの声でそう言えば、家の奥から母親の声が返ってきた。

バタン、と後で扉が閉まり、私は短い廊下を歩く。


昨日まで降っていた雨は止んでいて、すっかり晴れていた。

まだ少しだけ雨の匂いがするけど、今日は過ごしやすい1日になりそうだ。


いつも通り、エレベーターのボタンを押すと、ガラスの向こうでワイヤーが上下する。




あぁ、今日は数学と国語と音楽と、それから・・・

何て考えてたら、乗り場はあっという間に目の前まで来て。

ウィィンと自動で開いたその先に、乗り込んだ。

再び音を立てながら扉は閉まる。


1、と書いてあるボタンを押すと、エレベーターは降下し始めた。



あ、そうだ提出物があったんだっけ。

うん、確か一昨日終わらせたはず。

あとは放課後に友達と遊ぶ約束があって・・・



今日1日のことを大まかに考えていたら、エレベーター内の電子版が「1」の数字を示した。

着いた、そう思って降りるべく足を動かす。

が、




「え・・・・」




エレベーターは1階で止まらなかった。

そのまま、どんどん降下していく。

突然の出来ごとに、思考が一旦停止した。



有り得ない・・・。

だって、このマンションは、下は1階までしかないはず。

地下なんて、ないのに。

まだ、まだ、ずっと、降りて行ってる。

ありえないくらい、深く、深く。





「ちょっ・・・止まってよっ!!」




ようやく活動を再開し始めた頭で考える。

もう、1階を通り越して5階分くらいは降下したはず。

それなのに、どこにも辿りつかない。


慌てて管理室と繋がる通話ボタンを押した。

ガチャガチャと、壊れるんじゃないかってほどに、何回も。

それなのに、




「何でっ・・・!?」




繋がらない。

仮に自分の知らない地下の空間が存在していたのだとしても。

あまりにも深すぎだ。

おまけに、ガラスの先に見えるのは、ただただ闇だけで、それが余計に焦燥感を煽った。





「やだっ、止まってってばっ!!!」




ドンッ、と無意味にエレベーターの扉を叩く。

もちろん、止まらないし、扉が開くわけでもない。




願いも虚しく、エレベーターはどんどん降下するばかりであった。




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