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□水色01
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雨──。
確か、両親が死んだと聞いた日も、こんな風に雨が降っていた。
学校からの帰り道、俺はふと数年前の事を思い出していた。
というより、思い出さざるを得なかったという感じか。
それはきっと、雨の所為。
時間が時間な上、空まで曇っているから辺りは暗い。
そんな中、いつも登下校の途中に前を横切る空き地に、誰かがいたような気がした。
俺は立ち止まって目を凝らしてみる。
すると、確かにそこには人がいた。
この雨の中、傘もささずに空き地の隅の方で蹲って、何をしているのかは分からない。
普段ならそんなものは見なかったことにして通り過ぎるが、気がつけば俺の足はそちらへと勝手に動いていた。
近づくにつれ、その姿ははっきりとしてくる。
どうやら、他校の女子生徒の様だ。
全く俺には気付いていない。
その時、そいつの前にある地面が不自然に膨らんでいることに気付いた。
何となく、ここで何をしていたのか想像がつく。
「・・・おい」
「・・・・え・・・?」
声をかけると、そいつは驚いた様に振り返った。
涙の跡は雨に流されても、その顔は確かに泣いていた。
俺は傘を貸す素振りも見せず、そいつを見下ろす。
「何やってんだ」
「・・・・・・」
答える気配はない。
そりゃあ本人にとって軽々しく答えられるようなことじゃないだろうけど。
「・・・・ありがと」
「あ?」
「・・・声、かけてくれて」
意味分かんねぇ。
何で礼を言われなきゃならない。
気がつけば、そいつは小さく笑っている気がした。
それを見て、何故だか悪い気はしなかった。
今更だが、ずぶ濡れのそいつに傘を差し出す。
「馬鹿じゃねーの」
「・・・かも」
「馬鹿でもそんだけ濡れりゃ風邪ひくぞ」
「初対面に向かってひどくないですか?」
「知るか」
そうだ、初対面なのに。
それなのに、俺はどうしてここまで出来る?
他人と1つの傘に入るなんて、今まで考えもしなかった。
──ザァァ・・・
あぁ、
雨の所為か。