フォーリンガール
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「みなさん、本日は私のためにお集まりくださり、まことにありが」
「いやお前のためじゃねーし」
すかさず入った金さんのツッコミに見事に言葉を遮られた。
・・・ふんっ、わかってるよっ。
たまたま朝食時にみんなが集まっただけだって、別に私のためじゃないって。
けどよ、このナリプリめ。
「空気読め、ナリプリ」
「ナリじゃねーっつの、つーか、むしろ空気読めてないのそっちじゃね?」
「何を言うか、この大事な門出の日に」
「・・・っておい、ちょっと待てぇ」
とそこで声を上げたのは銀さん。
しかしまぁそんなことは構わず、私はルッスさんが作ってくれたイタリアンブレックファーストをパックにつめる。
この際どこぞの主婦だと笑われてもいい。
この機を逃したら、次にいつこんな食事を食べれるかわかったもんじゃないし・・・・。
と、思ってたら、突然私の目の前からパックが消えた。
えっ、ちょっ、
「銀さん返してっ!!」
「う"ぉ"ぉいっ!!てめぇこんなことして恥ずかしくねぇのかぁっ!?」
「いえもう笑われる覚悟はしておりますので、それよりも私の食欲が、」
「知るかぁっ!!・・・ってそうじゃねぇだろ、どうしたんだぁいきなり」
「パックならルッスさんが快く頂戴してくれて・・・」
「食い物の話から離れろ」
「だって、どうしたもこうしたも、私今日で旅立ちますので」
「は?」
ちょっとびっくりしたような、銀さんはそんな声を上げた。
いや、銀さんだけじゃなくって、金さんも、そして喋らなかったけど傘のおじさんも。
そして、ボスさんも、調理場にいたルッスさんもわざわざこちらへやってきた。
・・・てゆーか何、知らなかったの?
「いや、エレベーター直ったし」
「・・・そういや、本部の人間来てたっけ?」
「えぇぇー、寂しくなるわぁ」
クネクネしながらルッスさんが眉を下げてそう言った。
・・・ちょっと嬉しい、そんな風に思ってくれるなんて。
あ、そうだ!
「ぼっすー!」
「・・・あ"・・・?」
ぱっと思い出したことがあって、まるで友達に話しかけるみたいにボスを読んだらギロリと睨まれた。
怖ぇぇぇ・・・・。
何か周りからはすごい視線を感じるけど。
でも殺気とかは感じなかったわけで、私はポケットからあるものを取り出しボスの前に差し出した。
「はいボス、これ」
「・・・俺はてめぇのボスになった覚えはねぇ」
「まぁまぁ、とりあえず受け取ってください」
怯んだら負けだ・・・!!
そう自分に言い聞かせ、私がボスに差し出したもの。
辞表。
「・・・んだ、これは」
「え、何って辞表ですが」
「あ"ぁ?」
「っいやだから、フランの教育係やめますよーって」
別にそんな形式的なものでもなかったけど、一応。
最後の最後でご愁傷様とかなったら嫌だし。
そう思ってわっざわざ作ったんですが。
「いらねぇ」
「は?」
「そもそも、てめぇを正式に雇った覚えはねぇ、とっとと消えろカス」
・・・・ちょ、ひどくねぇかおい。
ひゅー、と心の中で冷たい風が吹くのを感じた。
・・・ふん、まぁいいさ、もう会う事はないだろうしねっ!!
「私が辞めたこと後悔しても知らないんだからねっ!!」
「・・・・誰がするかよ」
何かちょっと悔しかったから、びしっ、と指を突き立ててボスに言ってやった。
そしたら、ボスは少し笑っているようだった。
・・・あれ、嫌味っぽい笑いとかじゃないよ、これ。
人のことカス呼ばわりするくせに。
・・・意外と優しい顔もするんだなぁ・・・。
「・・・・ぼす、」
「まだ何かあんのか」
「・・・ありがとう」
そう思ったから素直に言った。
けど、まぁやっぱりボスの表情は不機嫌そうなままで。
・・・・何故か周りにいた銀さんたちはめっちゃくちゃびっくりしてたけど。