鮫誕2011

□16.
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・・・・・・絶対、何かがおかしい。



「スクさん、隠し事はよくないよ」

「あ"ぁ?」

「実はお箸使えないこと、みんなにだまっててあげるから、・・・ね?」



私が知らないはずの情報が、私の中からぽんぽん出てくる。

と、ぷちっ、という音が聞こえた。




「イタリアじゃ箸使えなくても困らねぇんだよぉぉ"ぉっ!!!!」

「え、キレるのそこっ?」

「チィ、・・・とにかく、隠し事なんてねぇ!てめぇは黙って大人しくしてりゃいいんだぁ」

「えーそんなの暇じゃんー」

「・・・・あのなぁ・・・っ」




スクさんが顔を引きつらせた。

いやだって実際、黙って大人しくとか暇で暇で暇でひm(略




「・・・・じゃ、外行く」

「・・・外出たくないんじゃなかったのかぁ」

「まぁ・・・いや、でも行く」

「・・・ったく、気まぐれだなぁ!」




ほら、行くぞぉ、と言ってスクさんは私の腕を掴んだ。

引っ張られるままに私はアジトの廊下を歩く。


やっぱり、・・・その後ろ姿がどうにも寂しげに見えて。




「そんな引っ張んなくって大丈夫だし!」

「う"ぉっ・・・何だぁ急にぃ・・・」



ぶんっ、とスクさんの腕を振り払って、小走りでその隣に並んだ。


・・・・後ろ姿は、見たくない。




「で、どこ行きたいんだぁ・・・?」

「・・・・・い、家・・・?」

「・・・はぁ?」

「べ、別にいーじゃん」

「・・・てめぇ、この期に及んで逃げ出すつもりじゃ・・・」

「ないっ!!絶対ない!!・・・てゆーか、どうせあと2日くらいじゃん」




あとちょっとで家には帰してもらえるはず。

なのに、なぜか私は今行かなきゃいけない気がした。

胸騒ぎがする、とかそういうんじゃないけど・・・。

何だろう、・・・なにか、忘れ物をしたような、そんな気がして・・・。




「ね、ちょっとだけでいいから」

「・・・ったく、しょうがねぇなぁ」




スクさんはめんどくさそうに髪を掻き上げながら、だけどちゃんと私の願いを聞き入れてくれた。

久しぶりに吸った外の空気に清々しさを感じながらも、やっぱり脇腹がツキンと痛む。

スクさんに会ってから余計にその痛みが酷くなってる気がした。

・・・いや別にスクさんが悪いわけじゃないけどさ。


と、その時だ。




「・・・っあ・・・・!!」

「・・・?どうしたぁ・・・?」

「・・・や、・・・ここ、・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・べ、別の道行こうっ!!」




十字路を曲がって目の前に現れた道。

何の変哲もない、ただの道だ。

それなのに、とてつもない嫌悪感に襲われた。

こんな感覚は初めてで。

・・・・・気持ち、悪い。




「・・・ね、早く・・・」

「お、おぅ・・・」



スクさんも私の異変を感じ取ったのか、服の袖を引っ張ればすぐに引き返してくれた。

やっぱり、何かがおかしい・・・。





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