鮫誕2011

□15.
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そもそも、あの時からおかしかったんだ。

あの指輪を拾った時から。


自分で言うのも何だけど、私、落し物とかってちゃんと交番に届けるし。

今までだって、財布とかアクセサリーとか拾ったらちゃんと届けてた。


今回だって同じはず。

帰り道の、ちょっと草木が茂った所で。

キラリ、と光るものが見えたから近付いてみれば、あの青い指輪があって。


いつもなら、真っ先に交番に行って「落し物拾いました」って届けに行くのに。

何故かその時は、そんな気になれなかった。

むしろ、届けちゃいけない気がして・・・。



そうこう考えているうちに部屋の前まで戻ってきた。


・・・よし、大丈夫。

きっとさっきの人はちょっと頭がおかしかっただけだ。

そうだそうだ、私あんな人知らないし、私のせいで誰が弱くなった、とかわけわかんないし。




「ただいまーっ!!」

「おぅ"、早かったなぁ」

「いやー広いばっかりで意外と何にもなくって」

「はっ、そりゃそうだろうなぁ、観光名所じゃあるまいし」




呆れたように笑うスクさんの横を通りすぎベッドに腰掛ける。

・・・あ、どうしよう。

戻ってきたのはいいけど、やっぱり何にもすることがない。




「・・・スクさんかm」

「却下」

「・・・チッ」



いい加減このやり取りも飽きた。


しん、とする室内が妙に居心地悪くて、何とか話題を探そうとする。

・・・けど、やっぱりさっきのことしか思いつかなくて。

というか、気になりすぎて。




「スクさん、」

「何だぁ」

「ここにね、黒髪短髪で肩に小鳥乗っけた頭おかしい人っている?」

「・・・・・・・あぁ、あの雲のガキかぁ・・・」

「くも?」

「いや、こっちの話だぁ、・・・って、会ったのかぁ?」

「・・・まぁ・・・」



途端、スクさんの表情が険しくなった。

かと思うと、座っていた場所から立ち上がり私の方へと向かってくる。

・・・ちょ、何か怖いんですけどっ。




「え、何、まずかった?」

「何か言われたのかぁ?」

「え・・・・いや、・・・・」

「う"ぉ"ぉい、正直に言え」

「・・・・・あ、あの人、って・・・・」

「・・・・・」

「名前・・・・何ていうの・・・・?」




言え、と言われれば言っちゃいけないような気がして。

だから話が大きく逸れない程度にスクさんの質問を回避した。

そしてまた後悔した。




「確か、雲雀恭弥っつったなぁ・・・」

「・・・ひばり・・・・・」



心のどこかでそうじゃないことを願っていたのに。

無情にも彼のことを知っているスクさんから聞いた名前は、

彼のことを知らない私が先ほど口にした名前と同じだった。


・・・何で、だろう・・・。




「・・・スクさん、」

「あぁ"?」

「・・・何か、・・・私に隠してない・・・?」




そんな気がした。

だから素直に聞いてみた。


恐る恐るスクさんを見上げれば、悲しそうな寂しそうな表情をしていて。

胸がぎゅぅってなった。





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