鮫誕2011

□05.
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女の勘を頼りにすればどうにかこうにか地上へ出ることができた。

危険だとか何だとか言われて危うく被害者になるとこだったし。

・・・あ、あの眼帯美人さんは大丈夫なのかな・・・・。



「・・・とりあえず帰ろっ」



時刻は既に21時を回っている。

狙われていようとなかろうとちょっと危ない時間帯には変わりない。

私は足早に家へと歩き出した。


・・・で、早速その足を止めた。




「よォ姉ちゃん」

「げ、」

「昼間は身内が世話になったなぁ・・・」




現れたのは、誰かは知らないけど、明らかに危ない人だ。

しかも昼間のことを知ってるあたり、スクさんじゃない方の外国人の仲間だろう。

・・・あれ、そういえばあいつってどうなったんだっけ・・・。


と考えているうに、じりじりとにじり寄ってくる気持ち悪い男。

しかも暗がりでよく見えなかったが、どうやら3人組らしい。

・・・今日はほんとについてないな・・・。




「なぁ、俺らとちょっとドライブしようぜ?」

「や、やだっ」

「んなこと言うなよぉ、傷ついちゃうだろ?」

「な?ちょーっと、話したいだけだからさぁ?」




気持ち悪い気持ち悪いっ!!

無駄に顔を近づけてくるそいつらがわずらわしいったらありゃしない。

・・・まだスクさんの方がマシだ、美系だったし。←

・・・・ってそういう問題じゃないっ!!


と、その時だった。




「う"ぉ"ぉい、てめぇらどこのファミリーのカス共だぁ?」

「あん?」

「んだ、てめーは」




いきなりぐいっ、と肩を寄せられて、声のした方を見上げてみればそこにはスクさんがいた。

しかもまた左手にあの長い剣がある。


てゆーかもう見つかった、追い付くの早すぎだよ・・・!!


とは思いつつ、私は私をを引き寄せるスクさんの腕から逃れようとはしなかった。

この変な奴らを前にしているからか、妙に落ち着く。


・・・って、何考えてんだ私。




「人の女に手ぇ出すなんて、いい度胸してんじゃねぇかぁ」

「・・・お、おい、こいつ・・・」

「あぁ?」

「どうした?」




ちょ、何かスクさんが変なこと言った気がしたんだけど気のせいかな。

いやそれも気になるんだけど。


どういうわけか、急に3人組のうちの1人の顔が、暗闇でもわかるほどに青ざめていった。

スクさんの方を指さして、小さく震えている。




「・・・あ、あの紋章見てみろっ・・・!!」

「んー?・・・・・・げ、」

「おいおい、嘘だろ・・・」




紋章、と言って男が指さしていたのはスクさんの丁度左胸辺りにある盾の形をしたワンポイント。

それのすごさが全くわからなかったけど、男たちの驚き方は尋常じゃない。

いや、驚くというか、怯えるというか。




「まさか・・・お前、ボンゴレ独立暗殺部隊、ヴァリアーの・・・」

「う"ぉ"ぉい、上の命令でてめぇらを殺せねぇことになってるが・・・やるってんなら殺さない程度に容赦はしないぜぇ?」

「・・・チッ・・・」



二、とスクさんが笑った気がした。

今まで見たことのない、怖い笑顔。

それに、・・・あの男達、何て言った?

暗殺、部隊・・・?


逆に驚かされたのは私の方で、だけど気付けば私たちに背を向けて逃げ出す男たちの後ろ姿が視界にあった。

途端、私を引き寄せていた腕が緩められる。




「・・・ったく、これで分かっただろぉ?」

「・・・・・・しらない」

「う"ぉ"ぉいっ!!」



なんだか負けた気がしたのが悔しくて、私はふいっとそっぽを向いて歩きだした。

が、がしっ、と肩を掴まれ止められた。


・・・やだ、何か、怖い。




「もっ・・・離してっ!!」

「っ・・・のカスが、下手に出りゃあつけあがりやがって・・・」

「勝手に下手に出てただけじゃんっ!!もうほっといてっ!!」




あれ、上手く足が動かない。

早くそこから駆け出したかったのに、体が言う事を聞かなかった。

しかも若干視界が霞んでる。



ほっといて、と言っておいて。

もし本当に見離されて。

その時にまたあの変な連中が来て。

今度こそ連れていかれたら・・・?



そう思うと、急に怖くなった。

その時だ、




「・・・・悪ぃ」

「っ・・・・」




私の肩を掴んでいた手がゆっくり離れて、代わりにぽん、と頭に手を乗せられた。

しかも、謝罪の言葉付きで。




「別に、怖がらせるつもりじゃなかったんだけどなぁ・・・」

「・・・こ、怖くなんか・・・」




まさにその通りなわけで。

痛い所をつかれてドキッとしながらも、何とかごまかそうとした。

もちろん、自分でもわかるほどに隠し切れていないと思う。

けど、スクさんはそれに関して何も言わなかった。




「・・・とりあえず、今日だけは言う事を聞いてくれねぇかぁ?」

「・・・・・・」




スクさんが私に何をしたか、と聞かれれば。

マイナスなことは何もしていない。

むしろ、私を助けてくれた。


まだ一緒にいた時間は少なすぎるけど、煩いイメージしかないスクさんがこんなに優しい声で頼んできてるんだ。

だからだろうか、「やだ」とは言えなくて。

私は小さく頷いた。




(・・・なんか、)
(私が駄々こねてるみたいで嫌だなぁ・・・)





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