gift&present2


□大人と子供。
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「先輩と同じ人間だったら、よかった」

そう言った瞬間に、ぼふんと煙あがった。タイミング悪い。恨むよ、十年バズーカ。


大人と子供。





あー、あー、入れ替わっちゃった。幼い了平さんはきょとんとして、何時の間に大きくなったのだとか言ってくる。いや、育ったんですけどそれは十年掛けて。で、あって、突如でかくなった訳では、決してない。


(参ったな、)


小難しい話してる途中だったのに。あっちには、今オレの了平さんが行っているのか。おいおい、誰と一緒だよ。

「あの、先輩」
「何だ?」
「誰と一緒でしたか?」
「お前だ」
「へ?」
「だから、お前と一緒にいた」

ぶわっと顔が熱くなる。あ、そうですか。返す言葉が力無くなる。何だよ、あっちでもオレと一緒かよ。何だそれじゃ。もしかして。

「オレと先輩って、付き合ってる?」
「付き合ってないつもりだったのか?」
「いや、だから」

あぁ、この人に通じる言葉って何語。宇宙語? 先輩語? そんなの、オレはインストールされてねぇよ。十五歳の先輩は、小さくて。オレでも殺せそう。

「……オレ、先輩と一緒の人間だったら良かった」
「うん?」
「そうしたら、同じものをみて、同じ感じ方して、同じ気持ちになれたのに」
「…………」

うわ、子供に沈黙された。気まずい。オレにどうしろと。五分少し経ったけれど、紅茶用の砂時計を傾ける。これが落ちきる頃には、オレのあの人が帰ってくる。返して、オレのあの人を。この人は、昔のオレのだ。あっちでは、何の話をして居るんだろう。どんなパラレルワールドを先輩は体験して居るんだろう。

「「違うから、好きになれたんだ」」

――――そうして。あれ? と気付く。何か、デジャブ。これ、昔、入れ替わった先輩が突然オレに言って聞かせてくれたことが、あるような。

「「同じものを見て、違う感じ方をしよう。違う気持ちになろう。それを二人で話そう」」

あぁ、言われた。こと、ある。昔にも、やっぱり。優しい眼差しで、きらきらのぴかぴかの目で、包むようにオレを見つめる彼は。あの時も。優しい手をオレに差し伸べてくれた。
違うからこそ、好きになれたと。言ってくれた。ことある毎に。オレがその意味を理解できるようになるまで、何度でも。飽きずに、呆れずに。根気強く。
届かん、と手を伸ばす小さな、幼い先輩のためにちょっと頭を屈ませて。撫でて貰って。あぁ、この感触。覚えている。そう思う。

「「俺達は、違う人間だから愛し合える」」

そこで、砂時計の砂が落ちきって、ぼふんと煙が上がった。五分経ったか。

「……何やってるんだ?」
「ちっちゃい先輩に、頭撫でて貰いました」

言ったら、ものすごい勢いで抱きしめられた。それから、わしゃわしゃと髪を撫でられる。ここか、ここか、と言ってくるこの人が実はヤキモチ妬きなのを、知ってるじゃないかオレ。

「愛してくれて、ありがとうございます」
「……同じ世界の過去だったな」
「オレ馬鹿だから、すぐ忘れちゃって」
「昔のお前も、今のお前も、愛してる」
「愛してる、了平さん」

子供とは違うのは、頭を撫でるじゃなくて、抱きしめるに進化した所とか。それから、その行き先がベッドな所とか。育ったね、了平さんも。


(同じものを見て、同じ感じ方をして、同じ気持ちになれたら、)


それでも、ちょっと寂しいんじゃないかな。今ならわかる気がする。昔はわからなかった。
違うからこそ、それを話して、共感して、笑いあって。それから。

「えろいことします?」
「する」

こういうことも。出来ないからね。
先輩は、野性的だからわかってたのかな。いつか、聞いてみたい。





I pray you follow happy days.
20120808 R
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