gift&present2


□未だ見ぬ僕らへ。
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「何をしてるんだ?」
「あ、先輩」

宿題で出されたタイムカプセルに入れる手紙を、書いています。


未だ見ぬ僕らへ。





並盛中では、恒例行事というか、タイムカプセルを埋める行事がある。もう何年も前の卒業生達が残したものだってある。立派なモンだ。そう言えば、ずいぶん前にツナが校庭から掘り当ててたっけ。全学年一斉にやるから、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

「お前は何を書くんだ?」
「ちゃんと先輩と結婚できたかってかっ」
「っ!」

電光石火で口をふさがれた。苦しい。む、と上目に睨んで見るも、恋人様は慌てているようでそれどころではないらしい。何せ、オレの発言はクラス中に聞こえたらしくシンとしているもんだから。でも、ちらほらと雑談がまた始まって、普通の休み時間に戻っていく。ほら、心配すること無いんだから。今更だって、先輩もいい加減学んでほしい。
手を離して貰って深呼吸。あー苦しかった。

「お前な……」
「何ですか、先輩は嫌なんですか?」
「そう言う事じゃなく」

そういうことじゃないなら、問題なんて無いじゃないか。――――そう、思うのはオレだけだろうか。先輩にも、そう思ってほしいのに。


(先輩の心配性、)


でも、未来の自分宛に書くなら、これだって決めたから。今更変更はしない。ただ、一つだけ。先輩の気配りに答えているとしたら。
内容で触れている「先輩」の事を、名前では書いていないこと。「先輩」としか書いていない、それだけ。それでも、未来のオレなら、きっとわかると思うから。
というか、わからなかったらそれはオレじゃない。

「先輩も、宿題出ましたよね? タイムカプセル埋めるんですよね?」
「あぁ」
「何書いたんですか?」
「……極限秘密だ」

あ、これは。聞き出してみたいことだ。ぷいとそっぽを向いた先輩の顔が、一刷け朱に染まって。これは照れている。何だろう、何を書いたんだろう。すごく気になる。
予鈴が鳴って、戻る、ときびすを返した先輩の後を追っかける。もちろん、宿題は机の中に突っ込んで。

「先輩待って」
「お、お前次の授業……」
「さぼりましょ」

ぐいぐいと屋上へ続く階段を上っていく。三年校舎には帰してあげない。だって気になる。あんな反応の先輩。なんて。


(かわいいから、青葉さんに見せたくない)


まぁ、こっちが本音なんだけどさ。
屋上なら、今日の天気は晴で、気持ちいいはずだから。二人でごろごろしてたい。

「山本」
「先輩、しー」

屋上への扉を開けると、晴れ渡った空が綺麗で、青空が手に届きそうだった。

「ねぇ、なんて書いたんですか?」
「まだ引っ張るか……」
「だって気になるんですもん」

追求してみると、先輩の顔がまた赤くなった。うわあ、可愛い。なんだろう、何書いたんだろう。そんな顔するようなこと、書いたの? 何、何?

「……と、結婚したかと書いた」
「はい?」
「だから、お前と極限結婚できたかと書いたのだ!」

――――え?


(それって)


オレと、同じじゃーーーー。決まり悪そうに何事かぶつぶつ言ってる先輩を見て、(そうじゃなくとも)確信する。ホントに、書いたんだって。多分、その手紙でオレは名指しされてるって。
ねぇ、アンタも同じ事を考えてくれたの。いつか掘り出すその時まで、好きでいてくれるつもりでいたの。先輩は、思い描いた未来は、ぴたりと一致しているんだよね。間違いなく。好き合って、二人でいられる未来を思い描いてくれているの。
小難しい事なんて、中学生の身じゃまだ全部はわからないけれど。それが簡単なことじゃないっての位はわかるよ。それでも、だからこそ。

「了平さんっ」
「うわっ」

がばっと、抱きしめて。勢い余ってコンクリの床に転がる。二人して。痛いけど、気持ちが良い。こんな、嬉しいのは。先輩と居ると、なんでこんなに嬉しいことが一杯なんだろう。両手に抱えても、零れてしまいそうなほど。それほど、与えられてばかりだ。幸せで、目眩がする。大好きという感情が心の中にあふれて、体から零れ出しそうだ。

「同じ事書いてると思わなんだ」

照れ隠しに呟かれたのも、嬉しくて。抱きしめてキスをする。二人倒れ込んだままで。
――――いつかやってくる未来でオレ達は、どうしているだろう。


(オレらと同じように、)


二人でいることだけは、間違いない。





I pray you follow happy days.
20120331 R
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