gift&present2


□*手のひらから伝わる。
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「――――っふ、あ?」
「……雨月?」

しまった、起こした。


手のひらから伝わる。





――――体を重ねた。
たいてい雨月は終わり頃には意識を飛ばしてしまうから、勝手に後始末をしている。いつも。起こさないように注意しながら、胎内にはき出した己の欲を掻き出すこともしている。そのままには出来ない事くらいは知っているからだ。その、最中に。いつもなら彼方へと意識を飛ばしてくんにゃりしている彼が、起きた。

「…………え。オレ……」

え、は俺が言いたい。
いつもは起きないのに。だいたいが後始末に使ったあれこれを片づけている途中で起きる位なのに。――――胎内に指をさし入れて、体液を拭っている時だって。彼は無意識に反応こそ返してはいたが、意識を取り戻したことはなかった。いつも、無意識だからだろう素直さで中途半端に煽られているだろう熱に浮かされていて。今、みたいに。肌に玉の汗を浮かべたまま。


(加減したせいか、)


普段が気絶させる程がっついている自覚はある。彼の体調と、任務と、俺の任務の折り合いを付けるとどうしても肌を重ねることができる時間は本当に限られていて。好物を目の前にお預けを喰らっている俺は、良しと解き放たれると。こうして雨月を抱き潰してしまうから。今日は加減してみたのだが。
何も足を開かせて、後孔から垂れ流れている白濁液を拭っている真っ最中に、起きることはないではないか。と、言うか。いたたまれない。お互いに。
俺を間に挟んでいるせいで完全に足を閉じれない雨月が、それでも膝を寄せて体を隠そうとシーツをたぐり寄せている姿すら、欲情できる。乱れ髪が汗で肌に貼り付いて、肌の白さを際だたせていて。情事の名残を残す熱を持った肌はまだ火照って赤くなっていて。とても、目の毒だ。加減したせいで、不完全燃焼な俺には。特に。

「ナックルさ、ん……あの、指。拭いて下さい」

小さく体を縮こめて、雨月が小さな声で言った。何のことかと思えば、体液まみれの己の手が目に入る。あぁ、このことか。と。
シーツにくるまって、けれど俺を足の間に挟んだままの、その姿がどう俺の目に映っているのか。彼は知っているだろうか。知らないだろう。知っていてこれなら、たいしたものだ。だが、この少年は知らずにやっているからそれはそれで、余計にたちが悪い。
ぬるついた手のひらに残る体液を舐め取ってみる。苦い。雨月がはき出した物と、俺が彼にぶつけた欲情の両方が混じってどちらの物とも言えなくなったそれは。お世辞にも美味いなどとは言えないけれど。それでも繋がっていた証拠で。

「な、ナックルさん、やめて」
「どうしてだ」
「口にする物では、ありません」
「そうでもない」
「え、え」

いつもなら、涙目になって顔を赤くした彼からの懇願は何でも受け入れるけれど。こればかりは、譲れるわけもない。――――汚くなど無い。神がお許しにならなくとも。この行為に何の生産性もないとしても。要求したのは俺で、受け入れたのは雨月で。だから、否定したくなどない。絶対に。
見る間に茹だった雨月が、シーツに埋もれるように顔を隠してしまった。それを、剥ぎ取るようにして奪う。羞恥にだろう火照った頬は桃色になっていて、それが欲を煽った。

「究極に後始末の途中だったんだがな」
「?」

寝台に押し倒して、縫いつける。両手をつなぎ合わせてみると、雨月の手も、俺と同じように熱かった。まるで、こうなることを望んでいたかのように。


(お前も、足りなかったか?)


俺は正直足りてない。また明日から、お前に触れられない日々が始まるのかと思うと目眩がしそうだ。けれど、そんな毎日があるからこそ、こうしていられる時間がより際だつ。日常があるからこその非日常だと。二人とも知っている。

「雨月、」

だから、ひっそりと。愛の言葉を耳打ちしよう。顔を覗き込んで、笑ってみせれば彼もまた笑顔になるから。困ったように、眉尻をたれて。照れ隠しのような、優しい笑顔に。


(愛してる)


繋いだ両手の平から、彼の答えが返ってくるから。まだ離したくない。
今日は、まだ解放してやらない。





I pray you follow happy days.
20120330 R
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