gift&present2


□それは天災にも似て。
1ページ/1ページ



「げ」
「む? 山本、何時の間にそんなに大きくなったのだ?」

毎度おなじみの煙の後、入れ替わった己の恋人の中学時代の姿にため息が出た。
だって、オレ(24歳)は、情けないことにこの人の扱い方をまだ熟知してない。


それは天災にも似て。





「先輩、ランボのおもちゃに当たりました?」
「うむ、お前の家に行く途中でな、沢田達と会ったのだ」

あー……そうか、この了平さん(何でわかるかって、それはおもしろいくらい変わってないからで)は、オレと中学時代から付き合ってる過去の人なのか。こっちは、知らなかった。中学時代、この人から好意を向けられていたことに。知らずに、大人になった。そうして、今。育ちきった好意を向けられて、こうして同じ屋根の下、二人で暮らしていたりする訳なんだけど。
ここはどこだ? そう問われて進退窮まる。正直に家です、と答えては見るものの、誰の家だと問われたらそれは、オレ達の家、としか言えなくて。

「?」

あぁ、頭の上にハテナマークが見えるよ。すげぇ恥ずかしくさせてくれますね、大の大人を。きらきらぴかぴかの目は純粋で、それ故に、困る。この了平さんは、ガキのオレとどこまでいってるの。なんて聞ける相手も居なくて。本人には余計に聞けなくて。ううう、オレにどうしろっていうんだ。


(じゃあ、せんぱいは、今)


ガキのオレと一緒。なのかな。あ、でも家に行く途中だったって言ってたから、商店街でも彷徨いてるところかな。子供のオレに会いに行くのかな。あ、嫌だ。今妬いた。自分に。でも、あの人はオレのもんだ。
中学時代から、付き合っているという事実を持つオレ達は、どんな未来を歩んでいるのだろう。白蘭のパラレルワールドを覗く力でも貸してもらえたら、実のところわかってしまうんじゃないかと。時々思う。けど、試したことはない。そんなことをしようと、オレ達の関係は変わらないからだ。今更、うらやましがって指をくわえても仕方ない。でも、ちょっとだけ。思う。


(あの頃から、付き合ってたら)


――――オレ達は何かが違ったろうか。違うんだろうか、何かが。

「山本? どうした」
「何でもないですよ。コーヒーでも淹れましょうか」
「いや、大丈夫だ」

子供に、悟られるほど落ちちゃいない。子供に、心配されるほど動揺してもない。
ただ、違う時間軸を生きる相手が、目の前に現れただけで。


(オレの、了平さんを、早く、返して、)


「お前は、大丈夫じゃないな」
「――――っ」

ソファに着地していた中学生の了平さんが手を伸ばしてきた。一回、二回、三回。頭を撫でられる。
優しい接触。それは、慣れたもののように思えて。多分、この人は同じ時間を生きているオレにこういう事を、してくれているんだろうと。思えるほどで。了平さんが恋しくなった。たった五分の我慢だというのに。

「十年後の俺が帰ってきたら、大丈夫になるか?」
「…………なりますよ」

感情と、直感で生きるこの人には、敵わない。いつも、負けっ放しだ。その直感は、当たるから。ツナの超直感っていうやつみたいに、当たるから。こと、オレに関しては、了平さんは強い。すごく。
オレに出来ることは、素直になることだけって、そんな風にしてくれる人。

「だから、向こうに帰ったらまっすぐオレに会いに行って下さいね。きっと、アンタを待ってるから」

いつでも、どの世界でも。笹川了平という、アンタを待ってるから。きっと、オレ達は。
多分いつから始まっても、この恋は幸せなものになっていたのだ。二人で、いられるという。何物にも代え難い、大きな幸せの元で。一緒に、年月を経て。生きていける。

「極限任せろ」

その笑顔に、オレはいつだって、救われるんです。
だから、五分間だけ、





I pray you follow happy days.
20120325 R
Copyright © 2012 【R】 Allright Reserved.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ