少年達の日々。4


□以心伝心。
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先輩は、猫も好きだけど犬も好き。
ということで。


以心伝心。





「……さっきから、何なのだ」
「えへへ」

子犬のような眼差しで先輩を見てる。さっきから。訝しまれたのは最初だけ。今は何かうずうずしたような顔でこっちを見てる先輩が居る。

「お前極限かわいいぞ、何なのだいったい」

ぎゅうと抱きしめれる屋上。キンコンカン、午後の授業のチャイムが鳴った。先輩は行く気配はない。やり。
オレはこれがしたかった。先輩を引き留めたかった。屋上給水タンクの影。二人で。いちゃついていたかった。二人でいたかったのだ。先輩をクラスに帰したくない。行かせたくない。だって、青葉さんが居る。


(だって、)


オレは先輩のこととなるとだってとでもが増える。それはとても自然に。妬いているのだ、つまりは。同じクラスが羨ましい。オレは一年間、先輩が居ない学校に通わなくちゃいけないのに。ボクシング部で一緒なのも羨ましい。オレは野球部だ。野球大好きだけど。けど、だって。ボクシング部には先輩が居る。あぁ、仮入部しちゃおうかな。いやいやそれはダメだ。

「……山本、キスしたい」
「はい」

抱きしめられた腕の中で顔を上げる。きらきら、ぴかぴかの目がこっちを見てて顔が熱くなる。あぁ、好きだなあ。この人が。笹川了平という人が。好きで、たまらない。そう思う。ぎゅうと胸の奥の方が締め付けられるようになって、苦しくて。これが恋だということを知ったのは、先輩から告白されてからだった。オレって鈍感。
ちう、と唇を合わせて幼いキス。それから、舌が入ってきて。歯列をなぞられて上あごを擽られる。これが気持ちよくて、オレはすごく弱い。というか、先輩相手には弱点だらけだ。舌を吸われるのも好き。気持ちいい。だからやり返す。先輩にも。

「……山も……」
「しー」


(こんな時に他のこと考えないで、)


先輩はオレのものでいて。そう願いを込めて、唇を合わせる。そこから、伝われテレパシー。
すると、ぐ、と肩を押されていったん引きはがされた。何か、ぱたぱたと落ちていると思ったら、先輩が泣いていた。
え、何で。

「せ、先輩!?」
「……すまん」
「いや、謝ることじゃねーし。つか、どうしたんですか」
「……お前が俺のものになってくれたのが、嬉しい」
「そんな」

そんなの、ずっと前からだよ! とは、叫びそうになったけど口を閉ざして、良い子良い子しておいた。叫びたかったけどね。本当に。今更何を。オレは、ずっと前からアンタのものなのに。知らなかったの? 知らなかったんだ。一方通行だとでも、思っていたの。あんなことやこんなことまで許したのに。先輩は、本当にチャンネルが複雑怪奇だ。

「オレはアンタのもの」


(アンタはオレのもの)

だから小難しいこと考えずに、一緒にいて、気持ちよくなりませんか。二人なら、何でも伝わるから。きっと。
でも、オレ達の以心伝心はまだまだこれからですね。アンタを泣かすようじゃ、本当に。まだまだだ。
きれいな目から、そんなに涙をこぼしたら溶けちゃうよ? 言って抱きしめたら、男にそんな台詞吐くもんじゃないって言われちゃったけど。ねえ。先輩。


(大好き)


思いを込めてキスしたら、また泣かれた。





I pray you follow happy days.
20120725 R
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