少年達の日々。2


□本当は知っている。
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昨夜は久しぶりに先輩にたくさん触ってもらえた。シモンとの戦いが済んでから久しぶりに。
んで、幸せな夢からふと、目を覚ました。見慣れた天井、極限の大きな布、先輩の部屋。と、そこまで理解したところで。

(あれ?)


先輩が、隣に居ない。


本当は知っている。





あくびがまだ止まらない。何時だ、と思って枕もとの携帯を手繰り寄せる。液晶ディスプレイを見てみたら、4時。って、オレも先輩も起きる時間じゃないはずだ。手探りで隣をっ探ってみても、もぬけの殻。先輩がいるはずの場所はぽっかりと空いている。体温も残っていない。
寝るのは二人、ヨーイドン、って早い。そんでもオレの方が少しだけ早いみたいで、先輩の寝顔を拝んだ経験はあんまりない。こうやって、夜中に目覚めたりでもしない限り。見たことはない。
でも、彼の部屋に泊まりに来た時。いつ起きようと、隣に先輩は居てくれたのに。居ないなんて、初めてだ。何で? どこ、と眠い頭を叩き起して起きあがる。まだあくびが出る。けど、そんなのに構っていられない。ぼんやりとする視界はまだまだ暗い。この時期になると、夜が明けるのも遅くなってくるものだ。部屋の中は電球のちっちゃいやつの明かりでなんとか見える程度。でも、それでも、十分だ。真っ白いきれいな人を見つけるのには、十分。

「……せんぱい?」

見つけた先は、ベランダだった。こちらの問いかけは届かないらしい。外気が入らないように窓を閉めているのだ。そう言うところ、本当にマメ。ベッドからシーツをはぎ取って、肩からかぶる。昨日散々暴かれた体を隠したいし。まだ体の包帯、取れてないし。それにそうでもしないと、この時間の外の空気って冷たそうだし。足音を消して、シーツお化けみたいな恰好で窓際まで行ってみる。まだ気付かない。まさかそこで寝てないよな? ちょっと心配になりながら窓を開けると、ぎょっとしたように先輩が振り返った。

「起きたのか」
「アンタ隣にいないんですもん」

寒くないんですか。問うと当たり前の様に是が帰ってきた。流石常時お子様体温の人。ちょっと肌に差すこの気温も平気とは。それもタンクトップ姿で。でもオレはシーツ纏ってシャツも着てても寒い。ので人間ホッカイロな恋人を抱きしめようとしたら手を掴まれて室内に逆戻りさせられた。それから、窓を背にした先輩に抱きしめられて。寝起きには刺激のきついキスを貰う。当たり前の様に膝から力が抜けて行った。でもそれでも許してもらえず、被ったシーツで固定するように両端を握られて。逃げられない。ついばむ様なキスでこちらが空気を求めて口を開くと、そこを狙ったように咥内に舌がねじ込まれる。喉奥に縮こまっているのを探りだされて、きつく吸われると足の裏からぞわぞわする感覚が這い上がってきた。そんで、それが腰のあたりに溜まってく。寝る前にさんざぱら触ってもらったんだけど、オレも先輩もまだまだ若いもんで。してる先輩の方も、体に熱が溜まってきたようだ。捕まっているだけでは悔しいから、シーツにくるまったまま、オレを好きにしている先輩を抱きしめる。もとい、縋る。膝ががくがくしてきて、力が上手く入らない。肉厚の舌が咥内を好きに動き回るので、口の端から唾液がこぼれそうだ。いや、零れた。――――寝起きにしては、激しい、んですけど。

「……ん、」

もう限界、ギブ。酸素が足りなくなって痙攣した喉から、甘ったるい声が漏れた。いつもなら、先輩はここで離してくれるんだけど。なんでか離してもらえない。苦しい、と思っても、続く。何、どうしたの。そう思って自然閉じていた目を開けてみるけど。キスに翻弄されまくってた視界は涙に潤んで、近距離になった先輩の顔に焦点を結んではくれない。そうしていると、オレが目を開けたのに気づいた彼がますます抱きしめる力を強めてきた。苦しい、と、もっと、がせめぎ合って。もっと、が勝った。
離して、と訴えようとしていた手は先輩の背中に。あったかい体温が服ごしに伝わってきた。そうすると、さっきベッドで一人起きた時のぽっかりとした寂しさが埋まって行くようで。さらに抱きしめる。

「……すまん、苦しかったか」

唇が触れ合う距離で、先輩が呟いた。しゃべっても、舌先が二人、唾液で繋がっているのがなんだかえろい。宵闇の中でもわかるほど、上気した先輩の顔をじっと見つめて。それから首を小さく振る。苦しかったけど、それはオレも望んだから文句はない。その意を示すように、もう一回唇をついばんで、彼もシーツの中にご招待。

「なに、してたんですか?」
「痕は、残りそうにないなと思っていた」
「はい?」

あ、この人と会話が成立しない。どうしよう、と思って、それから。彼の手がオレの腹のあたりを撫でた。あぁ、そこは。確かに昨夜、体を見られた時に。視線には気付いた。だって、この人が一番に血の海の中に居たオレをみつけてくれたんだから。
包帯を巻いた箇所、もう傷はすっかりふさがっているし痛む事もホントにないんだけれど。それとこれとは別な話らしい。彼にとっては。

「ちょっと位、残ってもヘーキですよ」
「俺の炎で治すぞ」

呟くように反論されてしまった。
だからかな、戦いが落ち着いてしばらく経っても体を重ねなかったのは。あの時、先輩はすぐに晴の活性でオレの怪我を治そうとしてくれた。でも、傷が酷くて回復が追いつかなかったと聞いている。


(治ったんだから、気にしないで良いのに)


とは、なかなか言い難い。一時は、もう歩けないと言い渡された身だ。もう白蘭のパラレルワールドの知識で持って完全回復してるんだけど。五体満足って素晴らしい、そう思うよ。言えなくても、この人を抱きしめることはちゃんとできるんだから。

「じゃ、のこってもいい痕、つけてください」

こつ、と額を合わせて、強請ってみる。さっき育てられた熱はまだ消えていない。むしろ、くっついていることでどんどん加速しているくらいだ。体を押し付けると、それは先輩もだったようで。オレみたいに舌がまだ麻痺してるなんてことはないらしいけど。(そこが悔しい)

「人前で着替えられなくしてしまうぞ」

忠告はもらったけど、笑って流した。だって、もう今さらだ。寝る前に、あちこち痕をつけられている。それは、絆創膏ではもう隠していられないくらい。
――――望むところです。
そう返せば、ベッドにアンタが戻ってくれるから。


(言って駄目なら、自分の手で確かめてよ)


先輩だって、もうオレの体が万全なのはわかっているはずで。後は、それ以外の所を納得するだけだと。
それは、抱きしめてベッドに二人でダイブすることで言葉に替えた。
お願いだから、一人で悲しまないで。抱きしめてそれが伝わりきればいいのにな。





I pray you follow happy days.
20110919 R
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