図書館
□君のいない海 story1
1ページ/2ページ
沖縄の海が煌めく、俺はそれをずっと見ていた。
でも、隣にいる暖かい存在は……
――――――もうない。
『君のいない海』 story1
{出会いと別れはこの海で}
「なんだよ綱海、こんなところに呼び出して」
俺は音村楽也、大海原中サッカー部のキャプテン兼司令塔をしている。
好きな音楽は[青春おでん]。結構いいよね、あの曲。知らない……? 動画サイトにあるから聴いてみるといい。
好きな場所は、俺の住むところの市街地にある深い青の海。
そこに、同じ部のルーキーである綱海条介に呼び出された。そこにあったのは、いつもとは違う真面目な表情。
そして――
「悪い、音村。オレは円堂と一緒に、エイリア学園を倒しに行く!だから明日、沖縄出るから」
とても残酷な――
「じゃあな、音村」
別れの言葉。
とても短い君との思い出が、俺の中でフラッシュバックした。
「トゥントゥクトゥントゥク―……」
「あ、もしかしてあんたか!?サッカー部キャプテンって」
出会いは、綱海からの質問。それに頷いたのが全ての始まり。
夕日でオレンジ色に染まった海を眺めながら、リズムを刻んでいた。それを乱したのが綱海、あいつだった。
「なあ、オレをサッカー部に入部させてくれよ!」
「トゥントゥクトゥントゥクトゥントゥクトゥントゥク―………」
「だーかーらー! 聞けって」
「トゥントゥ………」
いきなり顔を近づけてきた綱海に、女みたいにドキッてした。
とある曲を好きになるのやサッカーをしているときとは違う、愛しいという感情。
「…………好き」
愛の言葉、それは波の音にかき消された。
それから俺は、綱海をサッカー部に入れた。近くにいたかった、近づきなかった、愛したかった、愛されたかった。
「嘘だろ綱海、嘘だよな……そうだって「嘘じゃない。音村、オレ頑張るから!エイリア倒すために頑張るから!」
倒せなかったら、多分一生会えない。
また、一緒に試合ができない。
そう思うと涙が伝った。そしてその場に膝を突いた。
エイリアなんて倒さなくていいから………側に居て、喉まででかかった言葉を飲み込む。
――始まりはこの海。
――恋をしたのもこの海。
――別れも、この海