頂き物

□七海様よりキリリクA
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My home,Sweet home



「ここが給水塔か」

明けて翌日。朝食を済ませた二人は早速村の観光を始めた。
もっとも、クラウドが旅立つ前に言っていた通り観光するほどの施設はないに等しく、いわばクラウドの思い出の場所巡りみたいなものだった。それも数えるほどしかないという。
「昔はここ上るの苦労したんだけどね。もっと高いと思ったんだけどなあ…」
「子供の頃って何でも大きく感じたりするもんな」
色々なことを思い返しているのだろう。給水塔を見上げるクラウドにザックスは以前聞いた話について訊ねた。
「そういえばさ。お前の初恋の子いるんだろ。会いに行かなくていいのか?」
クラウドは見上げていた給水塔から視線を外し、今度は逆に俯いてしまった。
「ん…いいよ」
「なんで。せっかく帰って来たのに」
「だって…ここ出て行く時にソルジャーになるって大見得切っちゃったから…なんか会いづらいんだ」
「向こうは気にしてないかもしれないぜ」
外気に冷やされた白い息を吐きながらしばらく考え込むが、クラウドは首を横に振った。
「…ううん。やっぱりいい」
小さくそう言うと、クラウドは別の場所に行こうとザックスの手を引っ張った。



 * * *



それから何箇所か回った後、二人は村に唯一ある喫茶店に入った。まだ開店したばかりのようで中に客はおらず、カウンターの奥にいたマスターが食器の手入れをしていた。二人に気付くとヒゲ面のマスターは目をパチクリさせた。
「…あんたもしかしてストライフさんのところの息子かい?」
「あ…どうも」
「ミッドガルでソルジャーになるって出て行ったきり戻って来てないって聞いてたけど、帰ってきたのかね」
「ちょっと里帰りで…明後日にはまた向こうに」
「ははあ。ソルジャーになったから故郷に錦飾りに帰ってきたんだろ?」
「……ソルジャーには、なれなくて」
クラウドが気まずそうに言うと、マスターもいらないことを言ってしまったと決まりが悪そうな顔をした。

「そうそう、お前さん確かココアが好きだったね。後ろの人は友達だろ?一杯ごちそうしてやろう」
「ありがとうございます。…ザックスなに飲む?」
「あ、じゃあオレはコーヒーで。ごちそうさまです」


「ごゆっくり」
マスターはココアとコーヒーの入ったカップをテーブルに置くとカウンターに戻って行った。
二人は店の奥のパーテーションで仕切られた半個室になっている席についた。
クラウドも、そして珍しくザックスも無言でカップの中身を啜った。こういう時はすぐに喋り始めるのにどうしたんだろうと不思議に思いながら、クラウドは様子を見守った。
一方のザックスは再びカップを傾けると顔を顰めながらそれをソーサーに戻した。
初恋の子といい、さっきのマスターといい、ソルジャーのことは故郷の人には触れて欲しくない話題なのだろう。しかしソルジャーになると宣言して村を出た以上、どうしてもついて回ってしまう話題なわけで。
昨日、着いて早々家に行こうと言っていたのはこのことがあったからなのだろう。
本当は帰って来づらかったのかもしれない。それを自分がせがんだばかりに無理をさせてしまっただろうか。
ザックスは旅行を強引に推し進めてしまったことを少し後悔した。
「どうかした?」
どこか表情の暗いザックスにクラウドは心配そうに訊ねた。
「…無理させてたかな」
「え…どうしたの急に」
「帰って来たくなかったのに無理やり付き合わせちまったかなって」
「そんなことないよ。帰りづらくなかったって言ったらウソになるけど、母さんに会いたかったし。…それでさっきから元気なかったの?」
「…ん」
様子がおかしかったことの理由がわかり、クラウドは小さく笑った。
「ザックスがきっかけをくれなかったら、きっと悩んでばかりでいつまで経っても里帰り出来なかったと思う。いい機会になったよ」
「そっか…」
本当にそうならいいが、変に気を遣わせてしまったかもしれない。
グダグダと悩んでいるうちにザックスは移動中のことを思い出した。
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