頂き物

□七海様よりキリリク@
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My home,Sweet home



 母さんへ

 そろそろ寒くなる季節だね。そっちはもうすぐ雪が降り出す頃かな。
 こっちもそっちほどじゃないけどちょっと肌寒くなって来たよ。オレは寒いの慣れてるから全然平気だけど、ザックスは南国育ちだからこの季節は少し苦手だって言うんだ。ソルジャーって暑さや寒さに強いんだけど、ザックスは寒いのだけはどうしても我慢出来ないって、寒い寒い言いながら一緒にいる時は纏わりついて来るんだ。子供みたいだろ。

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 それでちょっと急な話なんだけど、今度休暇を取ってそっちに帰ろうかと思ってる。ザックスがニブルヘイムに行ってみたいって言うんだ。何もないところだって言っても全然聞かないし、母さんに会ってみたいんだって。来月あたりに休みを取ろうと思ってるんだけど、大丈夫かな?もし大丈夫なら休暇の手続きがいるから早めに連絡して欲しい。それじゃ風邪を引かないようにね。

クラウドより





「今度連休取って里帰りしよう」

ザックスが唐突にそれを提案して二ヶ月弱。ニブルヘイムへの帰郷の日が明日に迫っていた。

「やっぱ服もっとあったかいやつの方がいいよな」
「上着はダウンジャケットにした方がいいかな?」

旅行カバンに服を詰めながらザックスはあれこれと頻りにクラウドに訊ねる。まるで翌日の遠足を楽しみにする子供のようだった。
「ニブルの方、そろそろ雪降るみたいだから靴はブーツがいいよ」
「そっか、雪か…そうだよな、北国だもんな」
ザックスはそうつぶやくと、こちらに背を向けていそいそとカバンの整理をするクラウドに抱き付いた。
「もう、なに?」
すでに慣れっこになったそれを軽く流しながら、クラウドは荷物整理を続ける。
「楽しみだな」
「だから魔晄炉以外何もないところだってば」
「お前の家がある」
それだけで十分だろ?と言われ、クラウドは整理する手をピタリと止めた。
「…そうだね」



 * * *



ニブルヘイムへの交通網は都会ほど発達しておらず、空路でも駆使しない限りは滞在日数より移動日数の方が時間が掛かってしまう。休暇の取れる日数と相談した結果、向こうに滞在するのは二泊三日となった。


定期連絡船に乗り、陸路を辿ってやっとたどり着いた故郷は、日々変わっていく都会のめまぐるしさなどウソのように何一つ変わることなくそこにあった。
あたりはすでに薄暗く、人通りもまばらだった。
クラウドはキョロキョロと周りを気にしながらニット帽を目深に被るとザックスの腕を引っ張った。
「何だよ、どうした?」
「…いいから早く家に行こう」
何を焦っているのかわからないが、ザックスもそれ以上問わず、クラウドに従った。

村の入り口からしばらく歩いたところにクラウドの家はあった。
「ここか…ここがクラウドの家か〜」
ザックスがレンガ造りのこじんまりとした建物を感慨深げに見入っているのを尻目に、クラウドは真鍮製のドアノックをコンコンと叩いた。
「はーい」
その懐かしい声にクラウドは顔を僅かに歪めた。
中から聞こえた女性の声はもちろん…。
「ただいま、母さん…」
「ああ、おかえりなさい、クラウド」
ドアを開けた先に息子の姿を認めた母親は居ても立ってもいられず、抱き締めた。
「元気そうでよかったわ。ノックが聞こえた時、きっとあなただと思ったのよ」
息子との再会を喜ぶ母は、そのすぐ後ろに立っているザックスへ視線を向けた。
「あなたがザックスさん?」
「あ、どうも。ザックスといいます。初めまして」
「クラウドの母です。いつも息子がお世話になってます」
そう言うとクラウドの母はザックスに向かって丁寧にお辞儀をした。つられてザックスも深々とお辞儀をし返す。
お辞儀をした姿がその小柄さをより強調させていた。
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