研一妄想小説
□「トライアングル」
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研一は坂を下ってバイトへ向かっていた。
本当はもっと駅に近いアパートを借りれたら良かったのだけれど、少しでも家賃を安くしようと駅から遠く坂道のきついここで住んでいる。
交通費も生活費に回せる様にと、電車ではなく毎朝自転車を使っているのだ。
これといって何の目的もなく、ただ毎日決まった時間にバイトへ向かって帰ってくる。
研一はそんな生活をしていた。
(ブルルル・・ ブルルルル・・・)
夜になって研一が今日の仕事を終え、更衣室で着替えていると携帯が鳴った。
「もしもし。」
「研一君?バイトそろそろ終わったんじゃないかと思って。。。」
「ああ。」
「シチュー作ったの。今から来ない?」
「ああ、わかった。行くよ。」
研一は着替えてから女の家へ向かった。
女は研一よりかなり年上でそこそこ稼いでいる。
飯を作って食べさせてくれる。それがキッカケで研一はこの女と付き合うようになった。
飯を食わしてくれるからなのか、この女の事が好きだからなのか・・・
研一にもよく解らなかったが、なんとなくこの女と付き合っている。
バイト仲間に、
「お前そんな彼女できたの?おいしいじゃん。飯食わしてもらって、アッチも出来るんだろ?うらやましいぜ〜まったく。」
と冷やかされると、自分が特別な人間になったような気分になるのは確かだった。
(これが愛なのかもしれない。)
研一はそう思っていた。
(ピンポ〜ン)
「いらっしゃい。さあどうぞ?」
女に招かれて研一は靴を脱いで上がった。
部屋は女の好きな物だけで装飾されている。掃除も行き届いていて完璧だ。
「ねえ、これ今日研一君に似合うと思って買ってきたの。どうかしら。」
女は研一に袋を渡した。
研一が袋を開けると、それは落ち着いた色のセーターだった。
「うん、いいよ。ありがとう。」
「これ触った時にね、良い毛糸使ってるな、って思って。手触りが違うの。気に入ってくれるわよね?」
「うん。」
女は自分の選んだ物を研一も気に入ってくれた事に喜んだ。
「お腹すいたでしょ?さあ、食べましょう。」
研一は女の手作りシチューを食べ、その後いつもの様にセックスをした。