研一妄想小説


「イエローキャブ」
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ロスの小さなホテル。

僕はそこでアルバイトを嫌々している。

日本へ帰りたくて仕方がないのに、僕の病気のこともあって、両親は近くに置いておきたいのだ。

日本へ帰りたい。

自分が日本人にも関わらず、日本への憧れが強い僕。

ここにはもちろん日本人観光客は多い。でも、こんな小さなホテルに泊まりに来る日本人はいない。

皆、大手のホテルに泊まるからだ。

この古い小さなホテルに日本人が来ないのを知ってたからだろう。両親が勧めたバイトだった。

僕は街にいる観光客の日本人を見ては、日本への憧れを強めていった。




午後5時。

一人のアジア系女性がフロントに現れた。


『おい、ユウジの好きなアジアンだぜ?』


僕の隣りに立つグレッグが肘で僕を突く。


(どうせまた中国系アメリカンだろう。)


僕はそう思ったが、その女性の荷物の担当を暗黙の了解で引き受けた。

「荷物は一つですか?」

と聞きながら女性の荷物を持ち上げると、

「はい、ありがとう。」

と、彼女は応えた。


(んっ?)


僕は彼女の発した英語が少し日本人っぽいな、と一瞬感じた。

でも、またいつもの様に韓国系だろうと察した。





翌朝、僕が出勤すると彼女はフロント横のカフェで一人朝食を取っていた。

宿泊客なら無料で受けれるサービスだ。

彼女はしばらく食事をしながら何やら熱心に本を読んでいたが、僕が居ない間に部屋に帰った様子だ。

行動を見るところ、特にロスを観光しに来た客ではないのは明らかだ。

日中は外に出掛けたと思えば、一時間くらいで部屋に戻るようなパターンだった。

しかし夜には長時間出掛ける様子で、ホテルに戻るのが明け方の時もある様だ。

客の行動パターンを見るのは、ボーイの暇潰しだ。

まして気になる客ならなおさらだ。

僕が出勤していない時間の彼女の行動も、グレッグが話してくれる。



「なぁ、ユウジ。彼女、日本人っぽい名前だぞ?見たか?」

「ほんとか?!」

「ああ。びっくりしたさ、韓国系じゃないクレジットカードだし、間違えないよ。」

「そ、そうなのか。」

僕は興奮した。

「なあ、知ってるか?今日から彼女別の部屋に移動したんだぜ。」

グレッグが言う。

「え?なんでまた?不具合あったのか?」

「違うよ!今の時期は閑散期だろ?だから広めの部屋に移させてあげたのさ。例の部屋にな。。。。」

そう意味深にグレッグが話す。

「例の部屋?」

「そう。例の部屋だよ。クックック。」

「特別な部屋なのか?」

「あれ?ユウジ知らないのかい?」

「何のこと?」

「はは〜ん。知らないのか〜。例の部屋っていうのはな、モニター付きの部屋のことさ。。。」

「モニター付き?客室に高価なモニターがあるのか?」

「違うさ!客室をこちら側でモニター出来るって部屋さ。わかるだろ〜?」

「えっ!そ、それはヤバイだろ?!」

「シッ!声がでかいよ!あぁ、ヤバイさ。でも、見たくねえか?」

「そ、それは。。。」


僕はグレッグの話に内心興奮していた。

しかし、悟られない様に振る舞うのが日本人だ。

僕は典型的日本人のスタイルに憧れを持っているので、あからさまに感情を表さない。

でも、実際はその話だけで下半身が熱くなりかけていたのだ。
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