研一妄想小説


「トライアングル(2)」
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研一との甘い夜の翌日、竜也はいつもの様に深夜まで働いていた。

竜也の仕事は会員制クラブの経営だ。

まだ若かった頃に知り合ったある人の勧めで、今のクラブの経営を手伝った。

18歳だった頃の竜也は、あるホストクラブに転がり込んで働いていた。

竜也は飛び級になっても良いほどの学力がありながら、卒業間際で高校を中退しその店に入った変わり者だ。

すぐにその店で圧倒的な人気になった竜也。育ちの良い彼に、周りのホストにはない品恪があるのは当然だ。

騒いで必死で楽しませるのホストと違い、客は竜也と静かに酒を飲むことを望んだ。

竜也といるだけで現実から抜け出せる気分になれたからだ。

そして、何よりも竜也は美しかった。

竜也は静かに客と酒を飲み、そこで色んなものを見て学んでいった。

そんな竜也に目をつけた人物、それがクラブ経営を竜也に勧めた男だ。

その男なしで今の竜也は存在しない。

しかし一年前に急死した。その後、事実上共同経営していた竜也がその若さで代表取締役となったのだ。

竜也は重要な客の来店がない限り同席することはない。

今日はそんな重要な客の来店もなく、落ち着いた一日が終了した。

竜也が駐車場へ行き車に向かって歩いていると、後ろから声がした。

「社長!」

竜也が振り返るとクラブ責任者の佐々木だった。

「お疲れ様です。ちょっといいですか?」

「ああ、店はもういいのか?」

「はい、もう落ち着いてますので。」

「まあ、入れよ。」

竜也は佐々木を車の助手席に座らせた。

「どこか話せる所へ行くか?」

「いや、大した用じゃないからここでいい。」

佐々木は車の中に入ると口調を変えた。

竜也が亡き社長の経営を手伝っている頃引き抜いた男だ。竜也とは接客理念が似ていて息の合う男だ。

そして仕事を離れれば良き友人だった。

「この前ごめんな。急に用事が出来て行けなくなって。」

「ああ、いいよ。家の者に手伝ってもらったからな。」

「それでどうだった?ツリーの大きさ。業者間違えなく送ってくれてたか?」

「ああ、丁度よかったよ。きれいだぞ〜。お前も時間あったら新藤連れて来いよ、な?」

「そうだな。最近忙しくて、なかなかアイツにも会ってないんだよ。」

「そうか。じゃあ、今度家でクリスマスパーティーでもすっか?」

「え?竜也、お前。」

「そんなに驚くことか?俺だってパーティーぐらいするぜ。」

「でも竜也。前社長が亡くなって以来そんな席に一回も顔出したことなかったじゃないか。」

「ああ、そうだったか?」

竜也は言葉を濁した。

「お前まさか・・・・・?」

「な、なんだよその顔・・・・・・。」

「あぁ〜〜、そういうことか!ハイハイ。」

「そういうことか、って。どういうことだよ!」

「この間電話した時、何か様子おかしかったからな。荷物が届いた日だよ。」

「え?」

「とぼけんなよ竜也。俺はてっきり一人でしてたのかと思ってたけどな。なるほど〜、相手がいたって訳か〜。」

「い、いや・・・・。ま、まぁ、そんなとこだ。」

「ほ〜らな?で、どこで見つけたの?まさか竜也のことだからお客さんじゃないだろ?」

「る、るせーよ!!パーティーの時に会わせてやるよ。」

「マジか?こりゃ〜楽しいパーティーになりそうだ!で、いつにする?」

「そうだな。じゃあ店が休みの22日はどうだ?ちょっと早いけど。」

「ああ、いいよ。時間は?」

「20時からでどうだ?」

「わかった!新藤にも早速電話するよ。」

そう言って佐々木は車から出て、竜也に深く頭を下げて見送った。
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