研一妄想小説


「伊豆屋(2)」
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「ウッッッッ ハァハァハァ・・・・」

「アァァァァァ〜〜〜〜〜〜!!!」

風太郎はガバっとベッドから起きた。

(朝だ。いつもの朝が来た。)

風太郎はしばらく朝の光をぼんやり見ていた。

そして決心した様にベッドからゆっくり出て、着替えを済ませた。

風太郎はダイニングへ向かった。

ダイニングへ向かう廊下で、風太郎はお手伝いの春に会った。

「おはようございます。お、お食事の用意が出来ております。」

「ああ、ありがとう。」



いつもと同じ様子の風太郎を春はチラっと横目で見た。

風太郎はその視線を無視し、冷たい顔のまま通り過ぎた。

(昔はここで、4人で食事をしたもんだ。)

風太郎はそう思いながら、いつもの様に一人で朝食を済ませた。

「ごちそうさまでした。」

風太郎は丁寧にそう言って、新聞を手に取り自分の部屋へ帰って行った。



(ブルルルル、ブルルルル)

風太郎が部屋で新聞を読んでいると携帯が鳴った。

携帯を開いて見ると「緑」という文字が出ていた。

「蒲郡です。」

「緑です。起きてたのね。」

「おはようございます。」

「昨日は来てくれてありがとう。」

「いいえ、昨日はお邪魔しました。流石にコサージュの前評判が高かっただけあって、素敵なお店でした。」

「それはありがとう。でもお邪魔だったのは私の方だったんじゃないかしら?可愛いお嬢さんだったわね。」

緑が厭味を吐いた。そして黙っている風太郎に、

「茜が死んでまだ1年も経ってないのにデート?」

と聞いた。

「美咲さんは僕がお世話になっている知り合いのお嬢さんですから。」

「あら、そうかしら。」

緑は疑ってそう言った。

しばらく無言が続いた後、風太郎が

「緑さん、やきもちですか?」

と聞いた。

「な、なにを・・やきもちですって?わ、私は茜を・・・。」

「僕が彼女に手を出したんじゃないか・・・?そう思ってるんじゃーないですか?」

「お・・思ってるわよ。だって、それじゃあなたのせいで死んだ茜がかわいそう・・・」

「それは違うでしょ?」

「え?」

「私を差し置いて彼女に手を出したんじゃないか・・・?緑さんはそう思ってるんじゃーないですか?」

「な・・・ 何を言うの・・。」

「気持ちよかったんでしょう?緑さん、だから嫉妬してるんですね?」

「ち、違うわよ!私は茜を・・・。」

「妹の元旦那と、あんなことしちゃったんですからねえ。」

「や、やめて!あ、あれは貴方が一方的に・・・。それになかった事にするって言ったでしょ?もうその話はしないで!」

「そうですか〜、それは残念だ。」

「そ、それより私、今日取りに行きたい物があるの。春ちゃんいるわよね?」

「はい、いますよ。」

「わかったわ。じゃあ。」

緑は慌てるように電話を切った。
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