研一妄想小説
□「トライアングル」
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「あ、自転車そこに置いといていいよ。後はやってもらうから。ま、上がりなって。」
「は、はぁ・・・」
僕はノコノコと見知らぬこの男の屋敷に入った。全くと言って場違いだ。
(疲れてるし、早く帰って横になりたいのに。)
そう思ったけど、「この家にどんな人が住んでるんだろう?」と思い、興味もあったのだ。
男は二階の一つの部屋へ僕を招いた。
そしてどこかに電話を掛けて「修理しといてくれるかな?」と僕の自転車の話を誰かにした。
「さあ、座って。すぐ修理させるからさ。」
僕は高級なソファに座って、全く場違いな世界に連れて来られ動揺した自分を、この男に悟られまいとしていた。
でも、つい周りにある家具や本棚なんかをキョロキョロ見てしまっている自分がいた。
「俺、竜也って言うんだ。君は?」
「あ、研一です。」
「研一君か〜。この辺に住んでるの?」
「はい。少し先のアパートに。」
「ああ、あそこか〜。研一、突然ゴメンな。俺さ二日酔いの日はあの音キツくてさ。」
竜也というその男はそう言った。
突然自転車を止められ、初めは慣れなれしい男だ!と思っていたが、少し印象が変わってきた。
「あ、いえ。」
そう言う僕の目を竜也さんは見た。
(ハッ!)
僕は一瞬緊張した。竜也さんは男なのに綺麗な目をしていた。
「じゃあ家も近いことだし、待ってる間酒でも飲む?」
竜也さんはその綺麗な目とは正反対に、少し乱暴で男っぽい口調で僕に聞いた。
「い、いえ、僕あまりお酒は。」
「はぁ〜?そんなこと言うなよって。じゃあスッゲ甘いやつにしてやるから、な?」
「は、はい・・・。」
竜也さんは、カウンターの奥で酒を手早く準備し、僕の目の前に持って来た。
「じゃ、ご近所さんってことで、乾杯!」
竜也さんはそう言って一気にその赤い色をした酒を飲んだ。
「プハァ〜!悪魔的。さあ、研一も飲めよ。」
「は、はい。」
僕はそっとそのグラスに口を付けて少し舐めた。
それはとても甘く、懐かしいような、媚薬のような味のするお酒だった。
「どうだ?チェリーブランデーって言うんだよ。」
「は、はい。おいしいです。」
「無理だったら全部飲まなくてもいいんだぜ。」
「はい。でも本当においしいですこれ。」
「そうか。」