白神桜ーハクコウオウー
□白神桜ーハクコウオウー 005
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ジャラ…と重い鎖の音、細い首に、手首に、そして足首に嵌められた、冷たく重い枷に手をかける。
ノースリーブの白いワンピースに身を包み、零は静かに天窓を見つめた。
広い部屋の中、天涯付きのベッドだけが置かれ、その支柱にしっかりと繋がれた鎖。
白く弱々しい腕に刻まれている、赤い十字架が異様な存在感を放っていた。
しばらく動かずにいたが、ゆっくりと顔を上げ方膝を立てる。そして立ち上がり、目を細めた。
『深血晶、クレイモア』
弱く吹き抜けた風が、零の銀髪を揺らす。額に浮かぶ十字架が、微かに蒼白く光った。
バチッ、と音を立てて右腕が変形し、巨大な剣となっていく。ギッ、と耳障りな音と共に断ち切られた鎖が、小さな音を立てて床に落ちた。
五つの枷に残った短い鎖が、零の肌を弱く叩く。剣で扉を凪ぎ払うと、イノセンスの発動を解いた。
石造りの冷たい床を、裸足で踏み締めながら眉を寄せた。
上下へと伸びる大きな螺旋階段。
手すりも無く足を滑らせれば、中心の吹き抜けへと落ちる。零は壁に左手をつき、足早に階段を降り始めた。
ペチッ、という足音が何度も繰り返される。寒さにフルッと肩を震わせ、白い息を吐き出した。