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□M
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「今日も、帰ってこないね」
ジウは、数ヶ月前に出ていったきり帰って来なかった。
最初は反抗期だ、何だといって笑っていられたんだ。でも、もう変わってしまった。
8.manipulate
「やあクロロ、ただいま」
「俺からの連絡は見なかったのか?」
「ああ、ごめんごめん。でもジウが哀れでさあ」
「俺がいない間に闘いたかっただけだろう、ふざけるな」
「あ、ばれた?」
「当たり前だ。それより、」
ジウは何処だ、
団長の声が、静かに響いた。
バラバラになっていた団員達が、気がつくと全員揃っていた。
皆興味が無いような振りをしているが、団長とヒソカの会話に必死に耳を傾けていることだろう。
アタシも、例外ではない。
「ああ、今は新しくできた友達と居るよ」
「友達、だと?」
「ハンター試験で知り合った子さ、」
「特徴を言え、殺す」
「物騒だなあ◇」
クックックッ、と気味の悪い声と険悪な空気が場を占めた。
自然と眉間に皺がより、団長は立ち上がった。
「…………オークションには来るのか?」
「うーん、どうだろう」
「マチ、殺れ」
「ごめんごめん、きっと来るよ、楽しい事好きだしね」
「………ジウを見かけた奴は連れてこい、無理矢理にでもな」
団長の一声で団員達は立ち上がった。
そして各々、外へと歩きだしていった。
廃墟にはヒソカと団長だけが残った。
アタシは絶をして死角に身を潜めた。
団長の殺気が、勢いを増す。
「ヒソカ、お前は何かを隠しているだろう」
「どうしてそう思ったの?」
「普段の行いだ」
「酷いなあ、僕はただ楽しみたいだけなのに。まあ、今回は不可抗力だったけど」
「………何だと?」
「僕はナニもしてない、選ぶのはジウだ」
「お前、ジウは」
「選ぶのは妹、じゃなくて、ジウ個人だよ。君が必死に守ってきた鎖は、どれ程頑丈なんだろうね」
それ以来言葉は無く、風の空気を切り裂く音のみが場を支配した。
お互いの緊張が緩む事は無く、未だに殺気がぶつかり合っている。
「…………ジウは必ず帰って来る、蜘蛛に、な」
「そうなる事を祈ってるよ」
そう言うとヒソカは団長に背を向けて、外へと歩きだした。
アタシの存在には気づいていたらしく、気持ち悪い笑みと共に誘いの言葉を投げかけたが、一睨みして団長の元に向かった。
「団長、ジウは」
「…………ああ、戻ってくるさ必ず。」
「不可抗力、って何があったんだろう、心配だよ」
「…………マチ、俺は間違っていたのか?何故俺から離れていく?俺はただ、」
ジウを、守りたいだけなのに、
何も言えなかった。
口は震えて使い物にならない。
拳に食い込む爪は、心をえぐるように深くへ。
「間違ってなんか、ない。ジウは大事なアタシ達の、蜘蛛の、」
青く澄み渡る空は消え、空は一面に灰色が支配している。
気休め程度の言葉など慰めになる筈もなく、アタシの脳裏は「嫌な予感」に侵されていた。