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7.shout of joy
私はクルタ族だ
仲間は、強かった
しかし、上には上がいた
ある日の事だ、私はその日偶然外へ出ていたのだ
普段私達が外へ出る事は無いが、その日だけは出ていた
今となっては、何故外へ出たのか分からない
助かって幸せなのか、私自身にも分からない
仲間の姿を見た時、憎しみの中に、一握りの孤独を覚えた
皆は、戦ったのだ
底知れない恐怖と
守ったのだ
クルタの誇りを
私はそれすらも、
「 」
ヒソカに囁かれた言葉が、仲間の記憶が、涙を流すジウの顔が、脳を掻き乱す。
「おい、大丈夫かよっ!」
「何かあったの?」
ゴンやキルア、レオリオが駆け寄る。
私の足は、動かない。
分かっている。
だけども私はジウのことを、
「クラピカ何してんだよ!早く来いよ!」
「あ、ああ」
キルアの声に、意識を戻された。
動かなかった足は、不思議と進むようになった。
「どういう事だよ?」
「…………なの」
ヒソカとの戦闘が終わった後、ジウは泣き崩れた。
試験に落ちた訳では無いし、重傷を負っている訳でもない。
しかし、目の前のジウの瞳は絶望で満たされていた。
「記憶が、無いの」
その言葉に、私はある男を思い出した。
嫌な予感がする。
心臓の音が、やけに大きく聞こえた。
「クラピカ!」
「すまない、何だ?」
「クラピカ大丈夫?」
「大丈夫だ、ゴン。何があったんだ?」
全てを聞いた時、私は底知れない罪悪感に苛まれた。ジウの手に刻まれた、印。
それを私は知っている。
仲が良かった、年上の仲間にもらったお守り。
奴は、身に危険が迫った時に約に立つから、と私の誕生日に無理矢理押し付けたのだ。
ジウの手に刻まれた印は、奴がくれたお守りに描かれた模様だと気づいた時、全てが繋がった。
憎しみが溢れ出すと同時に、目の前の彼女に愛しさが止まらない。
何という事だ、私は、この人を好いてはいけないのに。
ふとした表情に、仕種に、とくり、と静かに音が跳ねる。
ああ、もう遅いのだ
気づいてしまった感情は、鬱憤を晴らすかのように膨れ上がる。
今なお流れる涙を、そっと拭き取る。
見上げられた顔に、利用しようなどという感情は消え去った。
「ジウ、」
記憶を失ったのならば、私が塗り替えて埋めてしまえばいい。
過去も全て受け入れよう、残虐な罪も蜘蛛も。