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□E
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5.ethnic



「それでは3番の方スタート!」



「じゃあね、」



「あ、ジウ!」



「え、」



「これは私の一族に伝わるお守りだ、受け取ってくれないかっ」



クラピカは顔を背けながら、口早に用件を伝え、私の手の平へ独特の色をしたお守りを握らせた。



「あ、ありがとうっ!クラピカも無事でいてね!」



「っ!」



「あれ、ゴン!クラピカの顔真っ赤だぜ、こいつ熱あるんじゃねー?」



「黙れっ、貴様先程から!」


またもや喧嘩を始めた二人に苦笑いしつつ、歩みを進めた。


しばらくすると、湖のような場所に出た。
腰を下ろして、手に握られたお守りに目を落とす。
青と、赤色の上等な布を使ったものであった。



「これ、何か見覚えが…………」



その時だった。




「なっ、まぶし………」



念で作られたものかな、と思い凝をし、中に入っていた宝石のようなものに触れた瞬間だった。
目も開けられないほど強いを光が襲った後、昔の古傷に、耐え難い激痛が走った。
脳まで響くような激痛に、皮膚が焼けるような、痛み。


「これ、念っ………!」



クラピカは念が使えない。ならば誰が?


目の前の光と、襲い掛かる激痛は引く気配もない。
次第に薄れていく意識の中で、何故か五年前のあの日が鮮明に蘇った。











「なーんだ、案外簡単じゃん」



五年前のあの日、私達は“緋の目”を持つクルタ族を虐殺していた。
私達は念を使えるし、今までブラックリストハンターに捕まった事もない。
だから、クルタ族は戦闘民族だから十分注意しなよ、というシャルの警告も聞き流す程度だった。



「おい、てめぇらか」



「えー?」



「幻影旅団、お前らを許しはしない。裁きを受けろ!」



至る所から血液を流し、瀕死状態だったクルタの男が突然立ち上がり、私の手を掴んだ。



「これで、お前は一生俺達から逃げられない………!」



まだ息があったのか、と甘い自分を戒めながら、掴まれた腕を強化した。



「………!」



「馬鹿が!これで俺の念は発動したっ!」



焼けるような痛みだった。お兄ちゃんに必死に助けを求めた。
最後に見たのは赤い血飛沫と、お兄ちゃんの背中だった。


それからだった。
お兄ちゃんが怖いと思いはじめたのは。






「やっと起きた」



「…………イルミ、それ」



「厄介なものに手を出したね、結構やばいかも」



そういってイルミは、太陽に反射して更に輝きを増す宝石を踏み潰してしまった。



「念、かけられてるね」



「ね、ん」



「しかも結構強力な、すごい憎しみ篭ってるんだけど。ジウ何したの」



イルミの言葉と同時に再び襲う激痛に、思わずよろけてしまった。



「あは、あはははは。いつもみたいに、大暴れしただけだよ。クルタ、気の毒だったな」



「ふーん緋の目か、クロロって相変わらず趣味悪いね。吐き気がするよ」



「お兄ちゃんの前で言ったら拗ねるからやめてよね」



お兄ちゃんは団員の前ではかっこつけてるけど実は傷つきやすいのだ。
ちなみにお兄ちゃんの食後のプリンを横取りすると、新しいプリンを与えるまで口を聞いてくれない。



「この手についた模様、父さんが知ってたかも。ジウが試験に合格すれば聞いてあげるよ」



「ほんとに!?んじゃ私頑張ってプレートとってくるよ」



「キルの邪魔したら殺すからね」



最後に聞こえた物騒な言葉は無視してその辺にいた受験生を適当に狩った。
それから残りの日は木の上で過ごし、アナウンスがあった後無事に帰り、最終試験へと進む事となった。





相変わらず居心地の悪いベッドにダイブをする。
溜まった疲れを癒そうと、深い眠気に逆らわずに目を閉じた時、部屋の鍵が開く音がした。



「ヒソカ、眠いの。出ていって」



「そんな事言わないで、僕に付き合ってよ」



「やだ、私寝るから…っ!」



一向に去る気配の無いヒソカを本格的に追い出そうと体を起こし、ヒソカが居るであろう方向に体を向けた私が悪かった。
予想以上にヒソカとの距離が近く、一瞬の隙を見せてしまった。



「なっ!?」



肩を強く押され、慣れないふわふわのベッドに体が吸い付けられる。
頭上にはメイクを落とし、見慣れない、髪を下ろしたヒソカがニヤニヤ笑っていた。



「次でハンター合格だね、気分はどう?」



「どうって、別に何ともないよ」



形の良い顔が近づき、思わず顔をしかめる。
ククク、と気味の悪い笑い声がした後、更に距離は縮められ、右耳へと声が注がれる。



「ハンターになってもクロロは君を認めないよ」



「は、どういう意味よ………」



「君が可愛くて可愛くて仕方ないからね、クロロは。認めてしまえば君との離別を意味するからね◇」



「そ、そんなの誰にも分からない!」



「僕には分かるさ。一生キミは兄の、クロロの檻の中。ハンターになっても、キミが生き絶えるまで………」



「馬鹿にするなッ!」



ニヤついていた顔は一瞬真顔に戻り、素早く机の上に飛び乗った。
いつの日かやけ食いしたスナック菓子の袋が、食べかすもろとも床に散乱した。



「クク、相変わらず君の足には惚れ惚れしちゃうよ」



「私は私、お兄ちゃんの影でも所有物でもない。次言ったら残酷な脚下(ブラッディ・ダンス)で股間を再起不能にしてやるから」



「血まみれの足も見たいけど、再起不能は困るなあ☆」



脅したのにも関わらず帰ろうとしないヒソカに、今度こそ一発お見舞いしてやろうと練をした時だった。



「う、いたっ…………」



「何、僕興奮してきちゃったから相手してよ。我慢できないよ」



「だ、まれ………!」



クラピカにもらったお守りの中にあった宝石を触った時のような、頭を刺すような鋭い痛み。
視界が揺れてまともに立っていられず、床に倒れ込む。
ふと模様がついた手を見ると、模様が肥大化していた。



「あーあ、使っちゃったか」


「イルミ!」



「ねえ、どういう状況なの。僕分かんないんだけど」



「ヒソカうるさい」



「◇」



仁王立ちしていたヒソカを片手で押し退けて、座り込み、私の手を見る。
眉間にシワを寄せ、少し悩みこんだかと思うと、こう言った。



「ジウ今すぐ練を止めて、ハンター試験辞退しな」



「なっ、何よイルミまで!私は合格するまで帰らないから!」



「ジウ、君の為を思って言ってるんだよ。今のままだと、クロロに認められる所か、記憶さえ無くす事になるよ」



驚きで練を止めた私に、イルミは更に止めを刺すように、ゆっくりと言い放った。



「ジウにかけられた念は、練を使う度、記憶が消えてゆくんだ」
 

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