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4.desire
結局スシ、の試験は合格者は無しで、クモワシの卵を取って来るという試験に変更になった。
「クモワシか、お兄ちゃんクモワシのプリン好きだったなあ」
「いつも二人で取り合いしてたよね、馬鹿みたいに」
「最後余計だから」
確かに二人ともプリンが大好きで、マチがクモワシのプリンを買ってきてくれた時なんか大人気なく、髪を引っ張ったり、掴み合いをして取り合ったなあ。
気がついたらフィンとフェイが全部食べてた。
むかつくからフィンの薄かった眉毛を剃ってやったら生えてこなくなった。
フェイはお兄ちゃんと一緒にいつも着ている服に兎のアップリケをつけてやった。
死にかけた。
たわいない出来事だったが、懐かしさを誘導するのには最適だった。
決めたはずの決意が、ぐらぐらと揺さ振られて…………、いやダメだ。
私は早く合格して、皆の元へ。
そしてお兄ちゃんの隣にいても足手まといにならないくらい、相応しい人物にならなければいけないの。
「帰りたくなったかい?」
「………ううん、まだ帰れない」
「そ◇」
私の答えは期待外れだったらしく、顔は輝きを失っていた。
その日はそれからずっとテンションが落ちていたらしく、その日は絡んで来なかった。
そうしている内に三次試験の会場であるトリックタワーに着いた。
ゴン達と一緒にいたクラピカと一瞬目が合った。
偶然だ、と思い視線を逸らす。
でも何故か気になって、今度は意識的に視線を合わせた。
驚く事にクラピカもこちらを見ていた。
どのくらい、であっただろうか。
一秒にも十分にも思えた。
「あー、ジウ!クラピカに用事?」
ゴンの明るい声に意識は戻された。
クラピカは耳を赤く染めてそっぽを向いていた。
何故か自分まで恥ずかしくなって顔の熱がとれなかった。
「クラピカ、どうして耳がそんなに赤いの?」
「馬鹿だなー、そんなん決まってるじゃん。クラピカはジウが」
「貴様っ、」
クラピカは咄嗟にキルアの口を塞いだ。
しかしキルアは体を捕まえていた腕をいとも簡単にすり抜け、ニヤニヤしながらクラピカを見ていた。
「どうしたんだろ二人、俺はわかんないや」
「そうだね、」
頭にハテナマークを浮かべ、考え込むゴンに私は苦笑いしか出来なかった。
私なんかが、恋などしてもよいのだろうか。
悶々とする思考の中、次々と下に落ちていく受験生の流れにのって私も落ちた。
落ちた先には、
「やあ」
「イル、ミ」
退屈そうに欠伸をするイルミ=ゾルディックがいた。
長い時間待っていたらしく、体をぼきぼき鳴らしながら歩いてきた。
「ここ、二人で進まなきゃいけないらしくてさ、困ってたんだよね」
「イルミには一番似合わない所に来ちゃったね」
「そうだね、でもよかったジウで。すぐ死んじゃったりしないしストレス発散出来るし」
「あ、これ馬鹿にされてる」
「やだなあ、冗談も分からないの?これだから凡人は」
「くっ………!」
イルミに馬鹿にされつつ進んでいくと、1時間程でゴールについてしまった。
正直、三次試験だしもっと骨のあるやつが出てくると思ったのに。
返り血さえつかない。
「君達随分と早かったね。まあでも来てくれて嬉しいよ、一人はツマラナイんだ」
「いつも一人なのに?」
「酷いな、イルミ」
イルミはお得意の毒舌でヒソカを罵っていた。
イルミ、ストレス溜まってたんだね。
イルミの顔の清々しさを見ると、少し興味があった殺し屋という職業は絶対するまい、と思った。
あと、少しというところでゴン達がやってきた。
皆どんな条件の部屋だったのだろうか、服がボロボロになっている。
まじまじと服を見ているとクラピカと再び目が合った。
赤く染まってゆく中、ふとある思考がよぎる。
私は汚れている。
深く染み込んだモノは、とれない。
ゴンと共にいるクラピカは、私には少し眩しく感じる。
あの光を私は、掴むどころか見る事さえ許されない行いばかりしてきた、そんな私に、
「ぶ、無事だったか」
「うん、クラピカは、頑張ったね」
せめて、希望だけは。
光に憧れるだけなら、許してくれるよね、