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幼き記憶が走馬灯のように駆け巡る。


まだ「永遠」という言葉が存在すると信じてやまなかったあの日。










1.Separation










「行くったら行くの!」



「ダメだ」




町外れの廃屋、仕事のために来ていた幻影旅団の団員達は呆れ返っていた。



「ちょっとぐらいいーじゃん!ね、マチ!」



「止めておいたほうがいいんじゃない、まあ勘だけど」



「マチまで…………!」



「マチの勘は当たるんだ、止めろ」



「分かったよ、はーあ!」



「分かればいいんだ、分かれば」



「……………何て言うか!お兄ちゃんのバーカ!」



お兄ちゃんが顔を背けた瞬間、私は足にオーラを集中させて一目散に外に飛び出した。
昔から逃げ足は誰よりも早かったのだ。
走りながら後ろを振り向くと、誰も追っては来ていなかった。




しばらく走ると住宅が増えはじめ、事前に調べておいた店まで歩く事にした。







お兄ちゃんとはいつも一緒だった。嬉しい時も悲しい時も苦しい時も。
お兄ちゃんは、好き。
だけれども少し過保護なんだ。
蜘蛛の皆が仕事で抜けて行く時だって、私はいつも独りぼっち。
私だって十分強くなった。

20才をきっかけに、今日私は自立する。
もう守られるだけの足手まといは嫌なの。






ある定食屋の前で立ち止まり、意を決して扉を開いた。




「ステーキ定食弱火でじっくり」



店主に声をかけてエレベーターに乗る。
肉汁が滴る肉をかじりながらこれからの事を思案した。






まずは、友達を作ろう。
団員の皆も友達だけれども普通の子とも話したい、遊びたい。

その後は恋をしよう。
お兄ちゃんの目を盗んで街に出た時があった。偶然で仲良くなった男の人は皆行方不明になった。
皆あらゆる言葉で慰めてくれたけれど、私は微かな血の匂いに気づいた。



ぼう、っと目の前の金属の扉を見つめていたら、急に視界が開けた。
扉を開いた先には沢山の人がいた。
ピンからキリまで色々な人がいて自然と胸が高まった。


しかし、いいことばかりではなかった。
エレベーターから足を一歩踏み出した時だった。
本当に微弱なものだったが特徴的なオーラを感じた。恐らく絶をしている。


蜘蛛の誰か、だ。


逃げなきゃ、捕まったら終わりだ。
もう決めたんだ。ライセンスをとるまで、自立するまではお兄ちゃんには会わないって。
運よく私も絶をしていたため、私とは分からなかったようだ。




96番とかかれたプレートを胸元に付け、その場に座った。
ほとんど男ばかりの集団を見渡すと、厳つい奴やらやけにかわいい男の子まで色々な人がいた。
その男の子は友達と見える人達とはしゃいでいて、微笑ましいな、と少し羨ましく思った。



「えっ、シャ、シャル………?」



その子の集まりの中には金髪がいた。
光に反射して煌めく金髪は蜘蛛のシャルを彷彿と思い出させた。
迎えに来たのが意外な人物であったために、一瞬絶をといてしまった。
警戒心から殺気も出ていたのだろうか、銀髪の子が真っ先にこちらを向き、近いてきた。




「アンタ、いつからいたんだよ?」



「君より少し前だよ、ほら」


96と書かれたプレートを見せた。
銀髪は怪訝な顔でこちらを見つめて、立ち止まっていた。




「ねね、俺はゴン=フリークス!お姉さんは?」



しばらくお互い見つめ合っていると、一人の男の子が視界に飛び込んできた。



「おいゴン、お前!」



「キルアうるさいよ!お姉さん名前は?」



「私?私は、ジウ=ルシルフル。よろしくね!」



「うん!キルアも早く!」



「……………キルア=ゾルディック。」



ゴンとキルア、は正反対で一見うまくいかなさそうだが、何か別の部分で合うのだろうか。
キルア、と呼ばれる銀髪はやけにゴンを気に入っているように見えた。


何故だろう、………………あ。



「思い出した、イルミの弟か君!」



「げ、兄貴の知り合いかよ…………」



「イルミは厳しいからね、そっかそっか!」




キルアに近寄ってまだ未成熟な体に体を屈めて耳打ちした。




「初めての友達大事にしなよ」



「…………!!」



キルアは初めこそ驚いた顔をしていたけれど、数秒立って理解したのか、少し赤くなって「うるせー、ばーか」と呟いた。





「おいおい、俺達にも紹介しろよ」



「レオリオ、クラピカ!」




先程の金髪はシャルではなかった。
シャルよりも少し髪が長く、特徴的な服を来ていた。



「クラピカだ、こっちの下品な男はレオリオという」



「オイ、喧嘩うってんのか!」



「私はジウ=ルシルフル、よろしくね」



「ああ、よろしく」



そうして自然と握手をした。手が触れた瞬間、むず痒いような、フワフワした気持ちになった。



「どうかしたのか?」



「い、いやっ!なんでもないからっ!」



ほんのり染まった顔を隠すようにして顔を背けた。
手を、男の人の手に触れたのなんていつぶりだろう。お兄ちゃんや、フィン達とはまた違って、私よりちょっと大きいくらいだけど、骨張っていて緊張した。



はあ、と緊張を紛らわす為に息を吐いて、顔をあげた時だった。





[やあ、君も来てたんだね]


顔をあげた先には奴がいて。
混乱する思考を断ち切るかのように試験開始のベルが鳴り響いた。






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