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私は今テニスで有名な立海附属中学に通っている。
私は勉強は中の上だし、顔も平々凡々、特別才能があるわけでもない、ただの一立海生。
だから毎日女子に囲まれてチヤホヤされているテニス部には恋する、とまではいかないけど憧れていた。
毎日がきらきらしてて部活も上手くいって羨ましい、なんて彼らを遠目に見ながら毎日たわいもない話で盛り上がる友達と教室の隅で大人しく生息する私だったのに。
「き、りはらくん」
「嘘だろ」
そこには黒髪ロングのカツラをかぶって女子の制服を着た切原赤也がいた。
何故こんな事になったのか、それは数十分前に遡る。
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「今日はこれくらいでいいよ、かつさん」
「でも先輩、部活ありますよね?私やっておきますよ」
「そうかい?じゃあお願いするね」
目の前で輝かしい笑みを浮かべているのは立海テニス部の部長、幸村先輩だ。
今日は月一回の美化委員会の仕事である花壇の水やりをしている。
最初は幸村先輩とペアではなかったのだけど、幸村先輩とペアになろうとした女子が多過ぎてちょっとした乱闘になった際、「切原君と同じクラスの女子」というだけで幸村先輩が私を指名して私とペアになってしまった。
おかげさまで数ヶ月間女子の視線が痛かった。
何故か、と後から理由を聞くと、切原君が私の事をミーハーじゃないけどミーハーに混じってテニス部の話をする変なやつ、と言っていたかららしい。
実際はただミーハーな友達の恋愛話に付き合っていただけなのだが。
「さてと、」
残った仕事といえばあと少し生えている雑草を抜いて、引き抜いた雑草を焼却炉に捨てにいくだけだ。
それからひたすら抜き続けて、15分くらいで終わった。
「よし、あとは雑草をここに捨てるだけ」
「かつさん」
え、と後ろを振り向いた瞬間、何か頬に冷たい物が触れた。
「う、わっ」
「あはは、びっくりしちゃったかな。これさっきのお礼」
頬から冷たい物が離され、目の前に缶ジュースを差し出された。
「え」
「任せちゃったからね、部活を内緒で抜け出してきたんだ」
戸惑っていると無理矢理缶ジュースを握らされた。
「あ、そうだ。かつさんにいいこと教えてあげる」
「へ?」
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「何なんだろう幸村先輩」
あの後耳打ちされて、職員室に行くと面白い事があるよ、と言われたが何かが起こっているわけでもない。
「もう十分も経ったしなあ」
からかわれたのかなあ、と思いつつ帰ろうとした時だった。
「くそっ、幸村部長の鬼!」
「赤也ちゃん可愛いなあ!」
「丸井先輩殺しますよ」
「プリッ」
この声は切原君に3年のレギュラーの人だ。
まだ部活はしているはずなのにどうしたんだろう。
「何で俺がこんな格好ッ」
「自業自得じゃ」
「そ、そんなあ」
切原君は心底落ち込んだ声で格好が何とか、と嘆いている。
どうしたのだろうか、悪いと思いつつも自らの好奇心に抗えず、少しのぞき見してしまった。
「えっ」
「あれ、今人の声しなかったか?」
「いや、それはないっスよ。今日はテニス部以外は部活ないはずだし」
「いや、今日は美化委員が来ちょる」
「そういえば今日幸村部長当番がなんとかって………まてよ、もしそうなら」
「そこにおる奴出てきんしゃい」
やばい
見つかっちゃった。
私が出て行くと、切原君は固まって口をぽかーんと開けていた。
「き、りはらくん」
「嘘だろ」
そこには黒髪ロングの女生徒、いや同じクラスの切原赤也がいた。
目撃
幸村テラ鬼畜
一応赤也夢です