短編
□似すぎた二人
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綺麗な唇だなと思った。
夕日に照らされて鮮やかで形のいい唇
女の私なんかよりもずっと綺麗な唇で、その持ち主も私よりずっと綺麗な顔をしていた
「んっ・・・・!?」
手から持っていたにゃんまるしゃーぺんが滑り落ちる。
床に落ちて、二人しかいない教室に音が響く
目の前にはさっきまで綺麗だなと思っていた顔があって
さっきまで綺麗だと思っていた唇は私のそれにあてられていた
パァンとさっきよりも高い音が教室に響く
私の手はとっさに彼の頬を叩いていた
彼は一瞬目を見開いたが、すぐ目をとじたたかれた箇所に手を当てる
「・・・ひどいですね」
叩かれた本人は、私のできる限りのビンタにもひょうひょうとしていて
余裕の表情でこちらを見下していた
「あんたのほうが・・・!!!」
「ひどい、ですか?」
ふっと、うすくわらうと私の目をじっとみつめる。
あぁ、見透かされているこの目だ
「むかつくほど似てるんですよね、俺たち」
さきほどまでえらそうにすわっていた机から降りて私が落としたシャーペンを拾う。
そのまま私のノートの真ん中におくと私の顔を右手でわしづかみした
「キスしたいって思ったんでしょう」
夕日に照らされてはっきりとうつる大神くんの顔はすごくきれいで
ものすごく核心をつかれて
私は黙っていることしかできなかった。
私たちはひどく似ている、お互いきっと、何を考えているのかが同じなぐらいに