「公?」
「ん?」
本を読んでた彼女が急に俺の手を握り悲しそうな目をして俺を捉える。
「公はここにいるよね?」
「どこにもいかないよね?」
彼女が握った手に力を込める。俺もその手を握り返す。ぎゅっと、この手がもう一生離れないように。世界一強力な接着剤かなにかを塗り込んでそれを合わせるように強く。
「また本に影響されたの?」
「…うん。」
「はは。…ねぇ星。綺麗だよね。」
額縁に飾られる見事な絵のように窓から見える星は輝き続けてる。
「公。」
「好きだよ。だから不安になんなくていい。」
「…だよね。…大丈夫だよね。」
そう言うともとから限界だったのか数秒も経たないうちに瞼を閉じた。
俺は彼女の寝顔を見ながら自分の部屋に溜まるダンボールを思い浮かべる。
夢や希望や未来を詰めたダンボール。でもそれは同時に悲しい別れも含まれているんだ。
「ごめん、」
言えなくてごめん。ずっと一緒にいると、そばにいると言ってあげられなくてごめん。
好きだから言わない。愛してるから言わない。この愛が詰め込まれた部屋にはあまりに嘘が似合わないから。
「どうか君を残して行くことを許さないで。」
彼女の唇にキスを落とす。おやすみ、と小さく呟く。
彼女の頭に頭を置き瞼を閉じた。
おやすみのキスこのキスに込めた願い、
君が俺なしでも安らかな眠りにつけることを願う。
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公が他県から美丞に進む設定。
素敵企画、愛ほし君と様に提出。
101103