白と黒

□白と黒 G
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☆白と黒☆
8、黒翼を持つもの


「こら、ルフィ!動くなって…」
「うるせぇっ!!俺は…待ち合わせ…場所にぃ〜…」

へろへろ、と座り込んだのはルフィ。
側に補助イスを持ったままあわあわしているのはウソップ。

部屋から抜け出そうとしたのはいいものの、身体が言うことをきかないルフィは逃走失敗。

「いるかどうかも分かんねぇだろっ?休んどけよっ…」
「いやだぁぁ…俺は〜っ…」
「だーっ!!もう!!分かったよ!俺がまたおつかい行ってやるから、寝てろ!!!」


ベッドに戻されたルフィは、転がりながらウソップをちらりと見て…ため息。

「ウソップばっかずりぃ……でも、たのむ。あと帰りに天使まんじゅう10個買ってきて」

「はいはい…」



ウソップがドアを閉め、ルフィは一人残された。
ベッドの上で、膝を抱え…座り込む。


「……バカゾロ。」

こんなに会いたいのに
俺に会えなかった昨日のことも、
天使界の面白い仲間のことも、
もっともっと話したいのに

寂しい、っていう気持ちだって
ずっと昔に…捨てたはずなのに
ゾロのせいだ。
…バカゾロ。


………


がちゃり、ドアが開いた。
ルフィが入口に目をやる。

「ウソップは行ったか?」
「うん。ゾロと会うと思う。」
「…そうか。」
「でも…カヤとか…」
「今日は育成所緊急の全体集会がある。問題は無い」
「…そっか」
「行こう」


ルフィに手を伸ばす…シャンクス。その表情は暗い。

シャンクスへ手を伸ばし、あと少しの所でピタリと止めて…ルフィは呟いた。

「なぁ、シャンクス」
「ん?」
「天使は死んだら…浄化されて人間と同じように魂となって神の国に行くんだろ?」
「あぁ。そこで次の生を待つだけだ」

「…人間になるのと、死ぬのはどっちが痛いんだろうな」


「……どうだろうな。」

ぽん、と頭に乗る大きなシャンクスの手。見上げるとシャンクスは複雑な顔をしていた。

「…」
「時間が少ない、もう行こう」



誰にも言わずに、
ただ二人で行きたい場所があるんだ。


昨日シャンクスに言われた言葉を思い返す。
ルフィは引っ張られた腕につられて歩き出した。


……


「…おいおいおい、大丈夫か?」

おつかいを頼まれたウソップが来たときには、既にゾロがいた。
しかし、黒い翼はボロボロで不安定に宙に浮いている。時折咳き込む彼を覗き込むと…。

「ルフィはどこだ」

ぎろ、と睨まれる。
なんだかいつもより殺気だってるのは気のせいでしょうか…ブルブル。


「あんまり調子良くないから、俺が来たんだけど…」
「ルフィ…」

ウソップは、ゾロが持っている物へ目を向け…ひぃと声をあげた。

「そ、そそそそそれは…ぅああああ悪魔の実……!?」
「あぁ、そうだ」
「何するつもりだ悪魔…!!もしや俺を…っ」
「長鼻なんかに使うかよ、」
「そ〜うですよねぇ……ははは〜…」

「とにかく、ルフィの所に行きたい。天使界の直前まで案内してくれ」

「お、おぅ…。直前までな!」


ウソップひチラチラとゾロを見ながら、進む。傷だらけのゾロに気を使って飛ぶ速さを考えてくれているようだ。


どんどん…雲が増えていく。
天使界は一応雲の上に浮かんでいるため、周辺には雲がたくさんある。悪魔界は雨雲や雷雲ばかりだが…。


天使の姿がちらほらと見え始める。
ウソップは立ち止まり、「呼んでくるから待ってろよなっ」と告げた。


「ウソップさぁぁんっ」

ふわふわ飛んできたのは、ウソップの友人であるコビーだ。

「コビー、どうした?ってか…天使の数…いつもより多くねぇか?」
「そうなんです!ルフィさんと…長がいなくなってしまって!!!」
「…ほ、本当か!?」

「はい…。ですから、ウソップさんに聞きたくて…。ルフィさんが行きそうな場所とかって…無いですかね…。」


「……分からないな。すまん」
「そうですか…。引き続き探してますから、ウソップさんも合流して下さいね!」


コビーが忙しなく飛び回る。きっと今回の事件の連絡係にでもなったのだろう。
ウソップは静かにゾロが居る場所へ戻る。

コビーの話はゾロの耳にも届いていたようで、険しい表情になっていた。



*
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