白と黒

□白と黒 D
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☆白と黒☆
5、舞い落ちる羽根


変な夢を見た。

昔…悪魔の育成所で、ロビンという教師が授業中言っていたことだった。

人間は楽な生き物。
誰かを幸せにしたり、不幸にさせる義務なんて無い。
ただ、自分の利益になる事を選んで、その為に生きる。そういう人生だって送ることが出来る。
でも、人間は不自由。
自分一人じゃ空も飛べないし、私達のような力だって使えない。
悪魔や天使の姿は目に見えないし、ね。


どくん、と心臓がひときわ高鳴り、ゾロは目を開けた。
起き上がると、目の前にひらりと漆黒の羽根が落ちてきた。

「……俺にも、きたか」

ふぅ、と息を吐いて翼をばさりとはばたかせてみる。
動きに支障は無いが、異様な程に羽根が散っていった。


……



「おい、毬藻」

その異変にいち早く気が付いてしまったのは、ムカつくことにも…サンジだった。

「お前…天使と何かあったんだな、やっぱり」

察しのいいやつ、腹が立つほどだ。

「お前には関係ない」
「そのままにしておくと、人間になっちまうぞ」
「別にいい」


「……」

シュボッ、と火の点く音。
サンジがタバコを吸い始めたようだ。


「今、悪魔界でこんな噂が流れてるぜ。『誰かが天使を堕とした。その英雄の名は不明』…ってな」

目を見開いたゾロに、くすりと笑う。

「その英雄っつーのは、お前なんだろ?」
「何で英雄なんだ…、そんな風に呼ぶな…!!!!」


がんっ、と近くの机を叩く。ひび割れが出来て「あ〜ぁ、壊すなよ」とサンジが口を挟むが、ゾロには聞こえない。


「悪魔は…そんなに天使が憎いか…?」
「相対する存在だ。俺はそこまで憎んではいないが、反対のことをしてる奴と仲良くなんざなれやしねぇ。」

天使は幸、悪魔は不幸。
相容れない二つの世界。
解ってはいるのだ。
でも、ルフィと俺の間にはそういった憎しみの感情など、ひと欠片もないのに。



「とりあえず、ドクトリーヌ先生に話しとくぞ。どうせお前は自分でなんか行かねぇだろ」
「余計なことをするな」
「嫌だね。お前が人間になったら、ノルマを正確にこなす悪魔がいなくなるんだよ。それに…、今急に人間になっちまったら、愛しの天使ちゃんは悲しむんじゃねぇのか?」


「……勝手にしろ。お人好しが」

「あー、クソめんどくせぇ奴だ。そんなに惚れ込んでるその天使ちゃん、今度見せろよな」


返事はない。
後ろを向いてその場を立ち去るゾロに
小さな袋を投げつけた。

後ろを向いたまま、ゾロはそれを掴む。

「それ、人間になるのを防ぐ事が出来る。使いたかったら、使っとけ」

「…お前が何でこんなもん持ってやがる」
「そこは聞くな、言いたくねぇ」


そうかよ、と言って去るゾロにチッ、と舌打ちする。




「全部…似てるのが、クソムカつくんだよ。アホ毬藻が」


ゾロが去ったあとの場所に
サンジの声が小さく残った。



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