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□お天気雨に思うこと【S】
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「あ、お天気雨やー。キラキラして綺麗やなぁ……ホンマ、こないに綺麗やったら昔の人が乱菊狐の嫁入り言うんも分かる気ぃするわ」

「……狐の嫁入りだ。勝手に言葉つくってんじゃねえ」

「なんや、十番隊長はんやないの。嫌やわ、立ち聞きなんてしはったらお里が知れるで?」

「アホ面晒して往来に立っといて言うことか。俺に聞かせようとしてんのはみえみえなんだよ。大体……あいつは別に狐面じゃねえ」

「そんなもん、僕が乱菊のお嫁さんになったらええだけやないの。残念やったねぇ、狐面やなくて」

「てめえみてえな面に生まれたら俺は一生顔を隠して生きるね」

「ひどいこと言いはるねぇ。結構、人気者なんよ?僕」

「そんなもん、一度でいいから俺に人気投票勝ってから言いやがれ」

「僕、十番隊長はんみたいにショタで売る気はないんで。子供と動物は視聴率取れる言うけど、皆の心に残るんはやっぱ大人の魅力漂う切ない恋愛ドラマや。十番隊長はんに月9の主役は……無理やろうなぁ」

「……てめえ」

「世の中やっぱり日乱よりギン乱や。見てみ、このお天気雨。お天気雨が降ったらどれだけのレディが僕と乱菊思い出すと思ってるん?」

「そんなもん、雪が降りゃこっちのもんだ。雪が降るたびにどれだけの人間が俺と松本の主従を越えたど突き合い想像してるかてめえ知ってんのか。主従萌えって一大ジャンルの前じゃ幼馴染萌えなんざ使い古された過去の遺物だ。お前はどう足掻いても成長期待度花丸ナンバーワンの俺にゃ勝てねえんだよ。それが分かってねえようなら教えてやる。俺の氷輪丸は氷雪系最強、全ての水は俺の武器――全ての天は俺の支配下だ……」

「あっ、卑怯やっ!!せっかくのお天気雨やのに雲集めるなんてっ!!」

「うっせえ……、大体、てめえのデフォルトイメージは蛇だろうが。狐なんてのは吉良が言い出したことなのに乗っかって調子こいてんじゃねえぞ」

「余計なお世話やっ!!本誌じゃ僕、いつお涙頂戴の餌食になるか知れんのにそないなことで遠慮なんかしてられへんわっ!!そっちこそなんやの、雛森ちゃんはどないしたん!?」

「雛森はただの幼馴染だっ!!俺がちょっとばかし感情表現豊かでそういう風に見えなくもないことは認めるが、俺は断じて貧乳よりも巨乳派だっ!!ちゃんと敵だって巨乳選んで戦ってただろうがっ!!」

「なんかえぐいわっ!!ああっ雨が雪に変わってまうっ」

「雨は夜更け過ぎーにー、雪へと変わるだーろー……」

「山下達郎はクリスマスだけで十分やー!!こうなったら最後の手段や……十番隊長はん、僕の卍解どんくらい伸びるか知ってる?」

「知らねえな」

「13kmや。……行くで、手加減なしや。神殺槍、『無踏連刃』」

「あああっ、てっめえ!!そんなのありかよっ!!」

「ほれほれ、雲も散らせる名刀やー。雲の切れ間からお日さん差してお天気雨の出来上がりー」

「いい加減、裏切り者は大人しく裏切っとけ!!松本は俺が貰ってやるから安心しろっ」

「頭に血ぃ上って毎回返り討ちに合うようなお人に乱菊は任せてられませんー。そっちこそ、子供は子供らしゅう雛森ちゃんとハイキングにでも行ったらええんや」

「どんだけ俺と松本がくっつくのを楽しみにしてる人間がいると思ってんだ!」

「そないなこと言うたら、どんだけのレディが僕が乱菊にキッスするん楽しみにしてると思てんの。大体なぁ……日乱派かて、ギン乱には寛容なんやで?それこそ僕と乱菊がジャスティスや言う証拠やろ」

「そんなもん、その後に俺と松本がくっつくのが前提だからに決まってんだろうがっ。お前はいつもいつでも過去の男なんだよっ!!松本の未来は俺とあるっ」

「うっわ、そないな恥ずかしいことよう言わんわー。これやから中二病は……」

「てめえの設定だって十分中二病だこんちくしょうっ」

「……これは、きっちりケリつけとかなあかんようやねぇ、十番隊長はん?」

「望むところだ。てめえに主人公よりも人気のあるサブキャラの実力ってやつ、見せてやるぜ……」


*    *    *


「……いいんですか?止めなくて」

「ほっとけばいいのよ。ったく、どうしてあたしが雨やら雪やらの所為で嫁に行かなくちゃならないわけ?ばっかみたい。ほらほら、あんなの見てたら仕事辞めたくなるから行くわよ、七緒」

「はぁ……」


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