short

□春死音
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むしろ、
行ってくれた方が
母親は安心だろうと思う



いつ壊れて
いつ暴れて
いつ殺されるか



そんな不安があるんだろう



しかしそれも当然
普通の人間だったら
恐怖を感じる



だから、いつも
俺はここに来て
クラウドを安心させる
同時にコイツの母親も



「何…考えてるの?」



不安の色を纏った
クラウドの瞳
震える、握り締めた手



「いや…何でもない」



笑顔を見せると
ほら、クラウドも笑った



































今日の仕事の忙しさに
溜め息をつく



慣れてはいるが、
何となく今日は
乗り気がしなかったからだ



目の前にあるパソコンを
不規則に叩いていると
同僚のジェネシスが
俺をみてクスリと笑った



「…何だ」



「苛立ってんなと思って」



苛立っていると思うなら
話しかけるな



そう言いたいが、
コイツは通じるような
奴じゃない。



だから何も言わなかった




目が合っていた
ジェネシスの視線を外し、
右横にある窓からの空をみた

















―…クラウド



小さく誰にも聞こえない様な
声で名前を呼んだ



クラウドの顔が
思い浮かんで、
ふ、と笑みが零れた



早く行ってやろう



それにはさっさと
大量の書類を片付けなくては



無理矢理ジェネシスにも
自分の分を押し付け、
文句を言われたが
完全無視した



何だかんだで
お前はやってくれるんだから



憎めない奴だ






























ジェネシスのおかげで
大量にあった書類は
片付いた



そして今、
クラウドの部屋にいる



相変わらずの
暗い部屋と冷めた体温



どちらかというと
俺の体温は
低いと思うが、
それよりもずっと
低い体温を握っていた



「…手が冷たい人って優しいんだよ」



「…らしいな」



「でも嘘だよね」



「何故だ?」



「俺優しくないし」



こんな壊れた奴、
誰が優しいって感じる?
そう言われた




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