short

□春死音
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可哀想なお前は
俺がいなきゃ何も出来ない
















―春死音―






















「クラウド、来たぞ」



暗闇に声を掛けると
ベッドの上でもぞもぞと動く。
こっちに来い、という合図だ



ベッドに近付き、掛け布団から少しだけ出ている頭を撫でる



明かりはスタンドだけ
クラウドは光が大嫌いだから



「…来てくれたんだ、有難う」



相変わらず顔は出さないが、声は出す



「あぁ、心配でな」



心配、その言葉を掛ければ
クラウドは安心する



きっと俺以外に言葉を掛けられても
反応しないだろうな



「セフィロスが来ると安心する…」



そう言ったクラウドは
俺の手を握った



相変わらず冷たい手に
体温を少し分けてやる



それがこいつの安定剤



「薬は飲んでないか?」




「昨日…飲んだ」



薬、そういっても睡眠薬系



不眠症を改善するための薬だが、
クラウドの場合
数が半端ではない
一気に半分は飲む



規定の数であれば
問題は無いが、
個数を超えると
夢遊病や何日も
目覚めない事がある



クラウドの母親は
もうお手上げ状態にいて
ここ数年話すことすら
していない様だ



「セフィロス…来てくれなかったし」



悪い、と謝ると
握りあっていた手に
力を込められた



「今日…側にいて」



「あぁ、分かった」



暫く手を握り合っていた時に
クラウドが顔を出した



相変わらず綺麗な顔



「どうした?」



「…もう少し暗くして」



そう言われて
スタンドの明かりを
調整する



「ん、良いよ」



ぼんやり明かりが灯って
なんとかお互いの顔が見える程度



「昨日ね、母さんに精神科行けって言われた」



久しぶりに話したのに
精神科だよ?と笑いながらクラウドは言った



確かにクラウドは
精神科に行っても
おかしくはない



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