嘘つきヴァンパイア



「そうだ、スザク。それでいいんだよ。」


俺はスザクを導くようにふわりとした髪に触れ、頭を首もとまで引き寄せた。
そうすれば理性を捨てたスザクは容易に陥落する。
俺の首に牙を立て、むさぼるように血液を吸い始めた。


「スザ…ク……」
「ん、う、っ」


息苦しくなろうとも俺の血を喰らい続けるスザクの髪を何度も撫でた。
それは、俺を主と認めた犬への褒美のように。
いい子だ、それでいいんだ、と何度も呟くように繰り返しながら。


「お前は…呪われているんだよ……スザク」


嘲笑う。
愛しいが故にヴァンパイアにしてしまった彼は答えないまま。
手に入れたかったのは事実だ。
そばにいてほしかったのは真実だ。
けれど俺が本当に望んでいたのは、こんな血生臭い結末だっただろうか。
俺が好きになったスザクはこんなに血に汚れてはいなかった。
俺がこの先どんなにあがいても行くことの出来ない陽光の下で、笑うお前が好きだったんだ。


「純血の吸血鬼に愛された者は……悲惨な終わりを遂げるんだ…」


それでも俺は酷い奴だから、血に飢えたお前を離すことは出来ないんだ。
吸血が終わり、唾液が曲線を描いて俺の首からスザクが離れていく。
荒い息使いに上下する肩を支えてやると、スザクの瞳が闇の中に浮かび上がった。
ヴァンパイア特有の、血色の瞳。
ぎらつくそれを見た瞬間、どうしようもなく胸が軋んだ。
スザクと俺は同じ生き物なのだという喜びと、スザクの躯を造り変えてしまったのは自分なのだという罪悪感。


(紅い……)


スザクを造り変えてしまった夜、今のスザクと同じ目をしていたのだろうか。
欲望ばかりの、獣の目を。


「…!スザク」


スザクはそのまま俺の腕の中に倒れこんだ。
スザクの身長が俺に追い付いているとはいえ、まだ俺の方が体は大きい。
難なく受け止めてやると、姫君を抱きかかえるように横抱きに抱きあげた。
吸血を行ったばかりのスザクの体は熱く、手袋をしている俺の手にもしっかりとその体温は伝わっていた。


「……ルルーシュ…何故、僕を…吸血鬼にした……」


うめくようにスザクが声を漏らす。
その時俺はどんな顔をしていたのだろう。
スザクの顔が悲痛そうに歪んだ。


「何故か、だと?お前が欲しかった……ただそれだけだ」







嘘つきヴァンパイア
(そうだ、俺は酷いヤツなんだ。だから俺を憎んでいろ。
間違って愛してしまわないように。)


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